本佐録(読み)ほんさろく

精選版 日本国語大辞典 「本佐録」の意味・読み・例文・類語

ほんさろく【本佐録】

江戸初期の治国書。一巻。本多佐渡守正信著と伝える。寛文期(一六六一‐七三)の成立か。二代将軍徳川秀忠下問に対する上申書形式で、為政者心得として、天道を知る事、百姓の仕置の事など七か条を述べたもの。

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デジタル大辞泉 「本佐録」の意味・読み・例文・類語

ほんさろく【本佐録】

江戸初期の政論書。1巻。本多佐渡守正信著とされるが未詳。2代将軍徳川秀忠の求めに応じて、政治をとる者の心得を7か条にして述べたもの。→本多正信

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改訂新版 世界大百科事典 「本佐録」の意味・わかりやすい解説

本佐録 (ほんさろく)

治国の要を説いた書物。《治国大概》《正信記》などともいう。江戸初期の成立。天道を知る事,百姓仕置の事など7項目からなる。〈百姓は財の余らぬように不足なきように治むる事道なり〉の文章で著名。また本書の〈天道〉観はキリスト教の影響の下に成立したことが指摘されている。2代将軍徳川秀忠の側近を務めた本多正信が秀忠のために書いたとされてきたが,内容上は,通俗訓戒書《仮名性理》(藤原惺窩著といわれる)に手を加え,正信著に仮託したものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「本佐録」の意味・わかりやすい解説

本佐録
ほんさろく

天下を治める方法を説いた本。1巻。江戸初期の成立。『治国大概(ちこくたいがい)』『正信記』などともいう。天道を知る事、侍(さむらい)の善悪を知る事、国主・郡主(大名)の心を知る事、百姓の仕置(しおき)の事など7項目からなり、「百姓は財の余らぬ様に不足なき様に治る事道なり」という文章は江戸幕府の農政思想を要約したものとして注目されてきた。新井白石(あらいはくせき)、室鳩巣(むろきゅうそう)などの学者によって、本多佐渡守正信(ほんださどのかみまさのぶ)が徳川2代将軍秀忠(ひでただ)のために書いたものとされてきたが、藤原惺窩(せいか)著と伝えられる通俗訓戒書『仮名性理(かなせいり)』にだれかが手を加え著者を正信に仮託したものと思われる。『日本教育文庫』家訓篇(へん)、『日本経済大典』3、『日本経済叢書(そうしょ)』1所収。

高木昭作

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百科事典マイペディア 「本佐録」の意味・わかりやすい解説

本佐録【ほんさろく】

江戸初期の教訓書。本多正信(佐渡守)が,2代将軍秀忠のために作成したといわれるが,藤原惺窩(せいか)著と伝える通俗訓戒書《仮名性理》と酷似しており,同書に手を加え,正信著に仮託したもの。1巻。7ヵ条に分けて政道のあり方を論じている。〈百姓は財の余らぬ様に不足なき様に,治る事道なり〉の言は有名。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「本佐録」の解説

本佐録
ほんさろく

江戸前期の教訓書。1巻。本多正信あるいは藤原惺窩(せいか)の著とされるが不詳。天道を知る事,身を端(ただ)する事,諸侍の善悪を知る事,国持の心を知る事,家を継ぐべき子をえらび後見の人おとなやくの人をえらぶ事,百姓仕置の事,異国と日本との事,の7項目からなり,為政者の天の理法に沿った仁政の実現を説く。木下順庵・新井白石・室鳩巣(むろきゅうそう)らは本多正信作とする。藤原惺窩作とする根拠は「仮名性理」に類似の表現がみられるためだが,「仮名性理」は江戸初期に流布した「心学五倫書」をもとに作られ,惺窩に仮託された偽書。本書もそれら2書の系統から作られた偽書とみられるが,江戸初期の政治思想を知るうえで有益。「日本思想大系」「日本経済叢書」所収。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「本佐録」の意味・わかりやすい解説

本佐録
ほんさろく

江戸時代初期の建議書。『治国大概』『治国平天下』『治要七条』ともいう。1巻。著者は本多正信といわれるが,確かではない。成立年代は不明。2代将軍徳川秀忠の尋問に答え,「天下国家を治むる御心持の次第」を述べたもの。

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旺文社日本史事典 三訂版 「本佐録」の解説

本佐録
ほんさろく

江戸初期,本多正信の政治論書
1巻。正信著と伝えられるが不詳。2代将軍徳川秀忠から政治の要点を尋ねられた著者が,政治の心得,大名の統制,農民支配など7カ条を記したもの。

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世界大百科事典(旧版)内の本佐録の言及

【年貢】より

…近世初頭の農政の方針は〈まづ一人一人の田地の境目をよくたて,さて一年の入用作食をつもらせ,その余りを年貢に収むべし。百姓は財の余らぬやうに不足なきやうに治る事,道なり〉(《本佐録》)とあるように,農民の収穫のうち再生産に必要な最低限のものを残して,あとは年貢として取り立てようというものである。この段階では租率((めん),取箇(とりか)ともいう)は可能な限り高く決められ,村高×租率によって年貢高は定まった。…

※「本佐録」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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