末梢性めまい、中枢性めまい

六訂版 家庭医学大全科 の解説

末梢性めまい、中枢性めまい
(耳の病気)

 めまいは、内耳視覚頸部(けいぶ)の関節や筋肉など末梢からの感覚情報の異常でも起こりますし、これらの情報を統合して体の姿勢や運動を制御する脳(脳幹(のうかん)小脳大脳の特定の領域)の異常でも起こります。前者を「末梢性めまい」、後者を「中枢性めまい」と呼びます。

 これらを区別するためには、患者さんにめまいの起こり方について詳しく話を聞くとともに、バランスについての詳しい検査(平衡機能検査)を行います。

●末梢性めまい

 ほとんどは内耳の異常によるもので、代表的な病気としてはメニエール病良性発作性頭位(りょうせいほっさせいとうい)めまい症、前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)に伴うめまい、中耳炎や中耳真珠腫(しんじゅしゅ)に伴うめまい、外傷による内耳の障害などがあります。

 末梢性めまいは、強い回転性のめまいを起こすことが多く、また、メニエール病のように不定期に反復する場合には日常生活に重大な影響を及ぼし、患者さんの苦痛は決して軽いものではありません。しかし、命に関わる病気ではなく、手術治療なども含めると、最終的には原則として何らかの方法でとめることができます。

●中枢性めまい

 代表的なものには、脳梗塞(のうこうそく)脳出血椎骨脳底動脈循環不全(ついこつのうていどうみゃくじゅんかんふぜん)などの脳血管障害、小脳腫瘍(しょうのうしゅよう)聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)などの脳腫瘍不整脈や高血圧、低血圧などによる二次的な脳循環障害によるもの、不安など心理的要因によるものなどがあります。

 とくに、めまいが脳血管障害による場合は、病変の広がりによっては命に関わることもあり、迅速な対応が必要です。めまい以外に激しい頭痛、顔や手足のしびれや麻痺、意識障害などを伴う時は、できるだけ早く病院を受診してください。

 一般に、脳に原因があるめまいは、長く続いて治りにくかったり、他の神経症状を伴うことが多く、このような場合にはバランスの検査に加えてMRIなどの画像検査を受けることが大切です。

 なお、見落とされがちなのはうつ病、不安神経症、パニック障害など心理的要因によるめまいです。明確な診断がつきにくいめまいでは、一度精神科心療内科などの専門医に相談することも考えてみてください。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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