木綿(もめん)(読み)もめん(英語表記)cotton

翻訳|cotton

日本大百科全書(ニッポニカ) 「木綿(もめん)」の意味・わかりやすい解説

木綿(もめん)
もめん
cotton

木綿は、アオイ科ワタgossypiumに属する繊維作物のワタの種子に密生する細い繊維を採取、加工したもの。ワタは多くの種類があり、大きく分けて多年生の樹木のもの、一年生の草本のものがあるが、現在では草本一年草が栽培の中心である。とれた繊維の長さ、太さ、光沢などの違いから生産地名でよばれており、米綿(べいめん)(アメリカ綿)、インド綿、エジプト綿、ブラジル綿、ペルー綿、中国綿、などがある。なかでも米綿の生産量がいちばん多く、アップランド綿(主産地は南北カロライナ、ジョージアアーカンソーアラバマ州など)やガルフ綿(ミシシッピルイジアナ州など)およびシーアイランド綿(一名海島(かいとう)綿ともいわれる。主産地は西インド諸島など)に分類される。とくにシーアイランド綿は木綿のなかで最高級品であり、しなやかでソフトな感覚、絹のような光沢があり、そのうえじょうぶであり、古くからヨーロッパの王室などで珍重されていた。

 木綿はインドにて古くから実用繊維として利用され、その起源は紀元前2300年ごろとされている。日本に木綿が伝来したのは799年(延暦18)で、崑崙(こんろん)人が三河国に漂着して種をもたらしたが、栽培技術が伴わず絶滅したといわれている。その後、室町時代になって朝鮮あたりから伝来したものが全国に広まり、一時は大量に生産された時代もあった。

 種子に綿毛のついたままのものを実綿(みわた)seed cottonといい、種子からとった綿毛を繰綿(くりわた)ginned cottonという。繰綿したのちの種子に残った地毛をさらにかきむしり採取した繊維長2センチメートル以下のものをリンターとよび、キュプラ・アセテート繊維の原料に使われている。綿繊維の長さは品種、栽培地などで大きく違うが、繊維長の平均は2~4センチメートルである。綿毛は1本が単細胞であり、完熟して綿花となる前は、中空の円筒状をしており、露出して乾燥すると、細胞膜がしだいに収縮してねじれをおこしながら、扁平なリボン状となる。これを、天然撚(よ)りとよぶが、天然撚りは可紡性のよしあしの判断とされる。

並木 覚]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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