木版印刷(読み)モクハンインサツ

デジタル大辞泉 「木版印刷」の意味・読み・例文・類語

もくはん‐いんさつ【木版印刷】

木の板目または木口こぐちの面に図画文字などを彫刻して版を作り、これにインキ塗布して紙をのせ、紙背からこすって印刷すること。また、その印刷物

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「木版印刷」の意味・わかりやすい解説

木版印刷
もくはんいんさつ

版材に木を使った凸版印刷。もっとも古い印刷方法で、7世紀ごろから中国で経典仏像紙幣などの印刷に使っていた。木版には板目木版木口(こぐち)木版とがある。板目木版は、朴(ほお)や桜の材を縦に切った板を版材(版木)とし、これに彫刻をする。この版に刷毛(はけ)で水性インキをつけ紙を当て、その上からバレンで擦って印刷をする。文字の種類の多い日本では、活版印刷発明後も江戸時代までは出版に使われていた。木口木版は、つげ材を横に切った板に彫刻した版である。板目木版に比べて非常に堅いので、白抜き図柄が多い。木口木版はイギリスで開発され、ヨーロッパで使用されていたので西洋木版という人もある。味わいのある印刷物ができる。

[平石文雄]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木版印刷」の意味・わかりやすい解説

木版印刷
もくはんいんさつ
wood block printing

木版を使って印刷する方式で,印刷の起源といってもよいほど古い印刷方式。歴史的には 660年頃中国に起り,100年ほど経て小仏像,経典,暦本,紙幣などが印刷され,その技術は世界に伝えられ,特に日本の「百万塔陀羅尼経」は,現在残されている最古の印刷物ではないかといわれている。また木版印刷は普通の商業印刷物には使われないが,工芸的な芸術性の濃い印刷物としては版画というジャンルを確立している。

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旺文社日本史事典 三訂版 「木版印刷」の解説

木版印刷
もくはんいんさつ

木の板に字や絵を彫刻した木版を使う印刷法
中国で始まり,日本では奈良時代の百万塔陀羅尼がはじめとされる。仏教の経典を木版刷にすることが多く,室町時代に中国版式の五山版が新しく発展。近世初期,朝鮮の技術が入り,江戸時代に最盛期をむかえた。

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世界大百科事典(旧版)内の木版印刷の言及

【版本】より

…ここでは狭義の版本だけを取り上げることとする。義浄三蔵(635‐713)の《南海寄帰内法伝》によれば,インドでも型をもって多数の小塔を造り,印板を使用して経文を絹などに印刷したのを見かけたとあり,その他傍証とするに足るものも存するから,厳密な意味での木版印刷術の発祥地はインドであるかもしれない。しかし木版印刷の盛行を招来したのは中国人であった。…

※「木版印刷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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