木津(読み)きづ

精選版 日本国語大辞典 「木津」の意味・読み・例文・類語

きづ【木津】

京都府南端部の地名。木津川舟運の河港で、古代には平城京外港となり、また奈良街道要地として知られた。藤原京・平城京造営のため、大量の木材が陸揚げされた港であるところからその名がある。

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デジタル大辞泉 「木津」の意味・読み・例文・類語

きづ【木津】

京都府木津川市の地名。木津川舟運の河港。住宅地平城京東大寺建設の際木材の集積地となった。

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日本歴史地名大系 「木津」の解説

木津
きづ

現鳴門市撫養町木津むやちようきづにあった中世の湊。鎌倉時代中期の紀伊高野山僧道範の「南海流浪記」には、建長元年(一二四九)八月九日、「立引田越阿波大坂至紀津、路六里、即日酉始乗船」とある。これは道範が罪を許されて配流先の讃岐国から高野山までの帰路行程を記した個所で、「紀津」と記された当地から乗船し、「牟野口村」に渡ったのち淡路に向けて出航している。また文安元年(一四四四)一一月から翌二年一一月まで摂津国兵庫北関に入港した小型船舶の関銭納帳である「兵庫北関雑船納帳」によれば、「木津」を船籍地とする船舶が延べ三四回にわたり同関に入港している。

木津
きづ

[現在地名]徳地町大字八坂

鎌倉時代初期に行われた東大寺再建の折、佐波郡奥地の杣山から切り出された材木を集めた所。佐波川上流で三谷みたに川と引谷ひくたに川との落合の地といわれる。

この地には木屋所が設けられ、東大寺の任命した山行事職の橘奈良定が、材木を検査して「東大寺」の刻印を押した。木津で検査に合格した材木は、筏に組み浮力を増すために本と末に計四隻の小舟をつけて佐波川を流して海に出した(東大寺造立供養記)

なお木津で材木に押した刻印は、年号不詳の周防阿弥陀寺文書に「白河法皇御代、勅院宣東大寺鎮守於五社御宝前三ケ国威打、一箇東大寺安置、一ケ摂津国尼崎安置、一ケ院宣相副周防州佐波郡三谷引谷之木屋所而奈良定屋敷安置」と記され、山行事職の橘奈良定の屋敷に置かれたという伝えである。

木津
きづ

鎌倉期にみえる地名。出雲国神門かんど郡に属する。現在の佐田町毛津けづに比定されている。文永八年(一二七一)一一月日の杵築大社三月会相撲舞頭役結番帳の四番に属する相撲頭役の一所として「木津御島一向畠地云々、乃木四郎子」とみえる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「木津」の意味・わかりやすい解説

木津
きづ

京都府南部、相楽郡(そうらくぐん)にあった旧町名(木津町(ちょう))。現在は木津川市(きづがわし)の南部を占める一地区。京都盆地の南端に位置し、奈良市に接する。1893年(明治26)町制施行。1951年(昭和26)木津町は相楽(さがなか)村を編入。2007年(平成19)加茂(かも)、山城(やましろ)の2町と合併し、市制施行して木津川市となる。東の笠置(かさぎ)山地北縁を西流してきた木津川が、方向を北にほぼ直角に変える地点にあり、古くは河港があった。藤原京や平城京造営の木材がここに陸揚げされたので、木津の名がおこったという。JRの関西本線、奈良線、片町(かたまち)線、国道24号、163号の分岐点で、京奈和(けいなわ)自動車道木津インターチェンジもあり、交通の要地。また近畿日本鉄道京都線が西部を通過し、古くから京都盆地南部の商業中心地をなしている。近年、地域の西部や西接する精華町、奈良市北部にかけての丘陵地帯に都市基盤整備公団(現、都市再生機構)によって平城・相楽ニュータウン(へいじょうそうらくにゅーたうん)が造成された。また、関西文化学術研究都市も開発され、大きく変貌しつつある。相楽(さがなか)神社の本殿、大智寺文殊菩薩(もんじゅぼさつ)像、十一面観音(かんのん)像などが国指定重要文化財となっている。

[織田武雄]

『『木津町史』全4巻(1984~1991・木津町)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木津」の意味・わかりやすい解説

木津
きづ

京都府南端部,木津川市南西部の旧町域。南は奈良市に接する。 1893年町制。 1951年相楽村を編入。 2007年加茂町,山城町と合体して木津川市となった。京都盆地南端,木津川が東から流れてきて北へ方向を転じる地点に位置し,古代から木津川水運と京都,奈良を結ぶ陸路とが交わる交通の要地として繁栄。地名は平城京造営の木材陸揚げ港であったことに由来。平城京の外港として重要で,大陸の文物は瀬戸内海淀川,木津川を経由,ここを通じて入った。現在も JR関西本線,奈良線,片町線が分岐し,近畿日本鉄道京都線が通り,国道 24号線と 163号線が交差する交通の要地となっている。主産業は農業で,米のほか,たけのこやカキ (柿) を産する。奈良市との境をなす丘陵部には,大規模な住宅団地が建設された。相楽神社本殿や大智寺 (だいちじ) の本尊である文殊菩薩坐像など国指定重要文化財も多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「木津」の意味・わかりやすい解説

木津 (きづ)

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世界大百科事典(旧版)内の木津の言及

【材木座】より

…木屋座とも称した。京都堀川,木津,奈良,鎌倉,堺など主要都市にその成立が確認される。京都堀川は平安末期には諸国から搬入された材木の交易場としてにぎわったが,座の成立を確認できるのは南北朝時代である。…

【車借】より

…初見史料は11世紀はじめに成立した《新猿楽記》の記事であるが,《東大寺文書》の中に残されている1104年(長治1)の料米下行切符が詳しい様子を伝えている。これによると同年6月20日付で〈泉水(木津)車力三両料〉として米9斗と〈泉水車借三人間食料〉として米3升が支払われており,1人あたり米3斗と間食料1升が給されたことが知られる。また,同年8月には車借26人の車力料が,9月には30人の車借料が支払われていたことから,12世紀初頭の泉木津にはかなりの車借が集住していたことがわかる。…

※「木津」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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