木偶(読み)でく

精選版 日本国語大辞典 「木偶」の意味・読み・例文・類語

でく【木偶】

〘名〙
① 木を彫って作った人形。もくぐう。また、広く人形。でこ
読本椿説弓張月(1807‐11)後「汝を屠(ほふる)こと、木偶(デク)を毀(くだく)より易し」
② あやつり人形。くぐつ。てくぐつ。
※俳諧・広原海(1703)三「とと様の木偶に継母傀儡師
五重塔(1891‐92)〈幸田露伴〉一〇「糸で曳かるる木偶(デク)のやうに我を忘れて」
③ 役にたたない人。能力のない人。また、そのような人をののしっていう。でくのぼう。
滑稽本・旧観帖(1805‐09)初「大勢と切合申たが、金吾どのはづねゑでくでナア。皆迯ていったアとおもはっしゃい」

もく‐ぐう【木偶】

〘名〙 中国古代の副葬品の一つ。春秋末から戦国・漢・遼・宋代にわたる墳墓に多くみられ、死後の生活にそなえてつくられたものと考えられている。木製の俑(よう)(=人形)で、土製土偶に対していう。転じて、木の人形一般のこと。でく。木偶人(もくぐうじん・もくぐうにん・ぼくぐうじん)。ぼくぐう。
※旱霖集(1422)悼大道和尚頌軸序「豈但如土梗木偶漠然無一レ悲喜」 〔潘岳‐弔孟嘗君文〕

でこ【木偶】

〘名〙 =でく(木偶)
男重宝記(元祿六年)(1693)五「傀儡子(でくるぼう)を、中国にてはでぎのばうといふ。あづまにてはでこといふ」
随筆常山紀談(1739)一六「常に人なき所に彼のでこを並べ、武者押(むしゃおし)、陣取をして戯れ悦びしとぞ」

ぼく‐ぐう【木偶】

〘名〙 木ぼりの人形。木像。でく。もくぐう。〔広益熟字典(1874)〕

き‐でこ【木偶】

〘名〙 大分県別府市や、鳥取市などで作られる木製の人形。

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デジタル大辞泉 「木偶」の意味・読み・例文・類語

もく‐ぐう【木偶】

木で作った人形。でく。くぐつ。
古代中国の副葬品で、木製の人形。戦国時代から代に盛行代に至るまで作られた。木俑。

でく【木偶】

木彫りの人形。また、人形。
あやつり人形。
役に立たない人。また、そのような人をののしっていう語。でくのぼう。「この木偶め」

ぼく‐ぐう【木偶】

もくぐう(木偶)

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普及版 字通 「木偶」の読み・字形・画数・意味

【木偶】もくぐう

木彫りの人形。多く葬具に用いた。〔水経注、水〕從征記に曰く、泰山に下中上の三り。牆闕(しやうけつ)嚴整なり。~庫中に時の故樂車木偶り。皆靡密(びみつ)巧麗なり。

字通「木」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「木偶」の意味・わかりやすい解説

木偶
もくぐう

木製の人形。木俑(もくよう)ともよばれ、明器(めいき)(副葬するためにつくられた器物)としてつくられたものである。中国では、戦国時代の楚墓(そぼ)出土の木偶がよく知られ、長沙(ちょうさ)左家公山1号墓、楊家湾(ようかわん)6号墓、仰天湖25号墓出土の木偶などがある。長沙馬王堆(まおうたい)1号漢墓からは、彩色を施した木俑、楽人木俑、着衣をつけた男女木俑などが発見され、これらは漢代木偶を代表する遺物である。木偶は戦国、漢代に盛行しているが、元、明(みん)に至るまで各種の木偶がつくられ、明代、朱檀墓(しゅたんぼ)出土の木彫儀仗(ぎじょう)俑群はその数も多く、木偶のまとまった資料として重要なものである。

[飯島武次]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木偶」の意味・わかりやすい解説

木偶
もくぐう

副葬用につくられた木製の人形。エジプトでは古くから盛んにつくられ,古代ギリシアでも初期には用いられた記録がある。中国では戦国時代の楚の国で用いられた例が多く,一般に彩色が施されている。湖南省長沙の戦国墓からは高さ 50~53cmの女侍俑,武士俑などが出土している。また,漢代の木偶としては,同じく長沙の馬王堆1号漢墓から出土した奏楽俑,侍俑など 162個体の木偶が注目される。

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