朝日新聞阪神支局襲撃事件(読み)あさひしんぶんはんしんしきょくしゅうげきじけん

知恵蔵 の解説

朝日新聞阪神支局襲撃事件

朝日新聞阪神支局(兵庫県西宮市)に1987年5月3日夜、目出し帽の男が侵入して散弾銃発砲、小尻知博記者(当時29)を殺害し、別の記者(同42)に重傷を負わせた。2002年5月3日午前0時に公訴時効が成立、一連の朝日新聞襲撃事件(警察庁指定116号)は03年3月の静岡支局爆破未遂事件の時効で、全て時効が成立した。新聞社の取材拠点である支局が襲われ記者が射殺されたという、日本の言論史上でも例がない事件。犯人側は赤報隊を名乗って朝日新聞の論調などを批判、「反日朝日は五十年前にかえれ」などと戦後民主主義体制への敵意を示す犯行声明を送り続けていた。犯行動機にはなお不明な点もあるが、事件の本質は、朝日新聞だけでなく自由な言論そのものを攻撃し、暴力や脅迫によって自分たちの望む方向に向かわせようとしたことは間違いないだろう。事件直後、日本新聞協会は「決意を新たにして民主主義と自由を守り、言論・報道機関としての使命遂行に立ち向かう」とする声明を出した。阪神支局は05年9月から建て替え工事をし、06年4月に新局舎が完成。襲撃事件を風化させずに語り継ぐ目的で、朝日新聞襲撃事件資料室を設け、一連の事件年表、小尻記者の遺影、「赤報隊」名目で届いた犯行声明文などを展示している。

(緒方健二 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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