デジタル大辞泉
「望郷」の意味・読み・例文・類語
ぼうきょう【望郷】[書名・映画・絵画]
池谷信三郎の小説。大正14年(1925)発表。自身のドイツ留学の体験を描き、「時事新報」の懸賞小説に当選、同紙に連載される。
《〈フランス〉Pépé le Moko》フランス映画。ジュリアン=デュビビエ監督による1937年公開の白黒作品。アルジェのカスバを舞台に、ジャン=ギャバン演じる悪党ペペ=ル=モコが、故郷フランスを思い起こさせる女性ギャビーに惹かれ、破滅していく姿を描く。
東郷青児による油絵。古代遺跡風の建造物を背景に、目を伏せスカーフをまいた少女が風に吹かれて立つ姿を、グレーを基調として描いたもの。昭和34年(1959)の作品。第5回日本国際美術展に出品し、大衆賞を受賞。東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館蔵。ノスタルジア。
三浦朱門の小説。昭和62年(1987)刊行。
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ぼう‐きょう バウキャウ【望郷】
〘名〙 故郷を慕い、遠く思いをはせること。故郷をなつかしく思うこと。懐郷。思郷。
※
保元(1220頃か)下「
帰京の期をしらず。さだめて亡郷の鬼とぞならんずらん」 〔岑文本‐冬日宴于庶子宅詩〕
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望郷 (ぼうきょう)
Pépé le Moko
フランス映画。1937年製作。《地の果てを行く》(1935),《我等の仲間》(1936)につづくジュリアン・デュビビエ監督作品。パリ警察の元警部の小説をもとにしてアンリ・ジャンソンが脚本を書き,ジャン・ギャバンが主演したデュビビエの代表作の一つ。日本ではとくに人気の高い作品である。
パリからアルジェリアのカスバに逃げ込んだギャング,ペペ・ル・モコが,美しいパリ女に出会って望郷の思いに耐えきれず,捕らえられてみずから命を絶つ物語で,当時,スリラーを詩の水準まで引きあげた〈詩的リアリズム〉の作品と評価された。しかし,アルジェリア独立運動が重要問題化したのちは,思想的バックボーンを欠いた商業作家の通俗メロドラマとする批判も出された。ハワード・ホークス監督のギャングスター映画《暗黒街の顔役》(1930)の影響が指摘される一方,逆にこの映画もジョン・クロムウェル監督のロマンティック・スリラー《アルジェ》(1938),ジョン・ベリー監督のセミ・ミュージカル《迷路》(原題《カスバ》)(1948)と2度リメークされている。
執筆者:柏倉 昌美
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普及版 字通
「望郷」の読み・字形・画数・意味
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望郷〔映画〕
1993年公開の日本映画。監督:斎藤耕一、原作:窪田操、脚本:松山善三、美術:間野重雄。出演:秋月健太郎、田中健、竹下景子、細川直美、小松方正、長倉大介、可愛かずみほか。第48回毎日映画コンクール脚本賞、美術賞、男優助演賞(田中健)受賞。
望郷〔曲名〕
日本のポピュラー音楽。歌は男性演歌歌手、森進一。1970年発売。作詞:橋本淳、作曲:猪俣公章。
望郷〔小説〕
北方謙三の長編ハードボイルド小説。1990年刊行。老犬シリーズの第3作・完結編。
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世界大百科事典(旧版)内の望郷の言及
【カスバ】より
… 現在では都市の城壁は大半が取りこわされたが,城砦の部分や旧市街はかなり保存されており,チュニスでは官庁街,ラバトやアルジェでは半ばスラム化した住宅街になっている。アルジェのカスバは,映画《望郷》に示されたように,ヨーロッパ人の目からみると犯罪者の巣窟であり,また異国趣味を満足させる観光の対象である。だがアルジェリア人にとっては映画《アルジェの戦い》に示されたように民族運動の拠点になった町であり,またイスラム都市の原型が残された心のふるさとである。…
【ギャバン】より
…フォーリー・ベルジェールのダンサーとなり,ミュージック・ホールやオペレッタに出演したのち,しばらくムーラン・ルージュで[ミスタンゲット]の相手役をつとめる。1930年,映画にデビューし,G.W.パプストの《上から下まで》(1933),ジュリアン・デュビビエの《白き処女地》(1934)で頭角をあらわし,続くデュビビエの《地の果てを行く》(1935),《我等の仲間》《望郷》(ともに1936),ジャン・ルノアールの《どん底》(1936),《大いなる幻影》(1937),マルセル・カルネの《霧の波止場》(1938)など30年代フランス映画の代表的な作品で多彩なヒーロー,あるいはアンチヒーローを演じた。〈ハンサム型〉ではない〈男性的な〉スターとして国際的な人気をよぶ。…
※「望郷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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