有料道路(読み)ゆうりょうどうろ

精選版 日本国語大辞典 「有料道路」の意味・読み・例文・類語

ゆうりょう‐どうろ イウレウダウロ【有料道路】

〘名〙 建設・管理費一部または全部を償還するため、その通行または使用に当たって料金を取る道路。
※問答有用(1951‐61)〈徳川夢声吉田茂「有料道路を作るがよかろうと」

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デジタル大辞泉 「有料道路」の意味・読み・例文・類語

ゆうりょう‐どうろ〔イウレウダウロ〕【有料道路】

道路整備などの目的から、その通行または利用にあたって料金を徴収する道路。

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改訂新版 世界大百科事典 「有料道路」の意味・わかりやすい解説

有料道路 (ゆうりょうどうろ)

通行または利用する者から料金を徴収することのできる道路。英語ではターンパイクturnpike,トールロードtoll roadという。本格的な普及をみせたのは17世紀半ばからのイギリスで,18世紀後半から19世紀前半にかけて有料道路の全盛期を迎えている。16世紀半ばのエリザベス1世時代のイギリスでは,教区民の賦役によって道路の建設や維持修繕を行っていたが,馬車交通の増加にともなって教区民の負担が著しくなったため,道路を破損する原因者である利用者から通行料金を徴収し,道路の維持修繕を実施するターンパイク制度を整えた。その後1706年に法律を改正して半公共的企業体にターンパイクの経営を委託するようになった。これが道路の維持・改良に果たした役割はきわめて大きく,1838年のイギリスにおけるターンパイクは全道路延長の18%程度を占めるまで整備されたが,鉄道の発達にともない19世紀後半には廃止されるに至った(〈ターンパイク〉の項参照)。大規模な馬車交通時代を築いたアメリカでも,18世紀末から19世紀半ばごろまでターンパイクが発達したが,鉄道の建設が進むにつれて消滅していった。しかし,20世紀に入って目覚ましい自動車交通の発達をみたアメリカでは,1937年これに対応する高規格の有料道路,ペンシルベニア・ターンパイクの建設に着手し,有料制による近代高速道路の端緒をつくった。第2次世界大戦後もニューヨーク,ニュージャージー両州の高速道路をはじめ,多くの州は有料制の高速道路を建設している。有料制の高速道路はヨーロッパ各国でも建設されており,フランスは1955年,イタリアは56年から建設を開始してアメリカ,西ドイツに次ぐ高速道路保有国になっている。また大韓民国や台湾などでも有料制を採り入れた高速道路の整備を進めている。

日本の有料道路は大別すると,(1)道路整備特別措置法によるもの,(2)道路法第25条に基づくもの,(3)道路運送法の規定によるものなどがある。(1)に当たるものは日本道路公団が事業主体である高速自動車国道および一般有料道路,首都・阪神各高速道路公団の都市高速道路,本州四国連絡橋公団(以上の各公団は,2005年に分割・民営化されている)の本州四国連絡道路,地方道路公社の一般有料道路,指定都市高速道路公社の都市高速道路および道路管理者(都道府県市町村)による一般有料道路で,(2)は道路管理者による有料の橋または渡船施設である。(3)は自動車運送事業者による一般自動車道や森林組合による有料林道などである。

 日本の有料道路の歴史はかなり古く,13世紀から16世紀ごろにかけて道路の通行に際し,関銭(せきせん)と称する料金を取るところが多かった。しかし,神社仏閣の修理料の調達を目的とするものが多く,当時の関銭は道路の維持修繕のための通行料金とはいいがたい。現在の有料道路制度が始まったのは1871年(明治4)の太政官布告からで,静岡県の中山峠や長崎県の日見峠につくられた賃取道路もその一つである。しかし,この時代の有料道路は外国のそれと同様,鉄道の発達にともなって衰退した。その後,1919年(大正8)に旧道路法が制定された際にも,太政官布告による有料道路制度が採り入れられ,橋や渡船施設を設けて料金を徴収する方法が残された。

 本格的な有料道路制度の導入は1952年の旧道路整備特別措置法に基づく。この有料道路は国または地方公共団体が橋や渡船施設に限らず,道路法に定める道路にまで事業対象を広げ,これらの建設に必要な資金は資金運用部資金を借り入れ,完成後は道路の利用者から通行料金を徴収することによって,一定期間内に事業費を償還していくものであった。だが,こうした有料道路制度も激増する自動車交通の需要に応じられなくなり,56年に有料道路の事業主体の新設,資金調達方法の拡大などを採り入れた現行の道路整備特別措置法に改められ,より積極的な姿勢で有料道路を道路政策の中に活用する方針が定められた。これに基づいて日本道路公団(1956),首都高速道路公団(1959),阪神高速道路公団(1962)が設立され,その後,70年には本州四国連絡橋公団と地方道路公社の設立が認められて,道路整備の立遅れの克服が図られた。今後もモータリゼーションの進展への対応が急がれるが,道路事業に要する巨額の資金を一般財源のみに依存するのは難しいため,広く民間資金の活用が期待できる有料道路事業は,いっそう重要視されることになろう。
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百科事典マイペディア 「有料道路」の意味・わかりやすい解説

有料道路【ゆうりょうどうろ】

利用者から料金を徴収する道路。道路整備特別措置法により,各公団や地方自治体が運営する東名,名神,首都,阪神等の高速道路や一般有料道路などと,道路運送法により私鉄等の民間事業者が運営する自動車道と,道路法25条により都道府県,市町村が管理する有料橋,有料渡船施設がある。→道路
→関連項目日本道路公団

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世界大百科事典(旧版)内の有料道路の言及

【産業革命】より

…馬車交通そのものも,ローマ時代から進歩のない舗装技術に頼っていたために,道路の状況が悪く,十分には機能しなかった。したがって,河川改修とともにターンパイク,つまり有料道路の建設が交通革命の端緒を開く。最初の有料道路は1663年に議会で承認されているが,法律上その建設が認可された総延長距離は1730年までに898マイル(約1440km),50年までには1382マイル(約2210km)に達し,50,60年代にはさらに激増した。…

【ターンパイク】より

…近代イギリスの有料道路。一般には高速道路,有料道路をさす英語であるが,元来は通行料徴収のために道路をふさいだ障害物,通行料取立門を意味した。…

【道路】より

…第2次大戦後の東西分割によって西ドイツには2110kmが残されたが,連邦長距離道路法,鉱油税等の一部を特定財源化した交通財政法などに基づいてその整備が進み,高速道路は7500kmにまで達して,戦後の西ドイツ経済の成長を支えた。 アメリカでは1920年のパークウェー,37年のペンシルベニア・ターンパイクの着工を皮切りに,有料道路建設時代にはいった。56年にはインターステート・ハイウェー万1000マイル(6万5600km)の建設が定められ,また燃料税等を財源とする連邦道路信託基金が設立され,壮大な道路網が形成された。…

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