月状骨軟化症(読み)げつじょうこつなんかしょう(英語表記)lunato malacia

改訂新版 世界大百科事典 「月状骨軟化症」の意味・わかりやすい解説

月状骨軟化症 (げつじょうこつなんかしょう)
lunato malacia

手首の関節を形づくっている8個の手根骨のうちの一つである月状骨の阻血性壊死が主病変で,オーストリアの放射線医であるキーンベックRobert Kienböck(1871-1953)により1910年に報告された。キーンベックの臨床像,X線所見の詳細な報告の結果,この病気はキーンベック病Kienböck's diseaseともいわれるようになった。20~40歳の男子にみられ,大工など手を酷使する労働者に多い。きき手である右手に多く,両手が侵されることもあるが,片手の侵される頻度が高い。骨壊死発生の直接の機序は不明であるが,くり返し外傷が加わることと,月状骨の血行に機械的な圧迫を受けやすい解剖学的また力学的弱点のあることが要因と考えられている。症状は,手首の腫張と増悪する疼痛,関節の運動制限などがおもなものである。X線撮影により月状骨の圧潰などがみられる。治療法は,初期には装具などによる手関節の安静と固定が有効で,進行期には種々の手術的治療が行われる。予後は一般に良好なものが多い。
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