月次絵(読み)ツキナミエ

デジタル大辞泉 「月次絵」の意味・読み・例文・類語

つきなみ‐え〔‐ヱ〕【月次絵】

1年12か月の行事風俗を自然の景趣背景に描いた絵。平安時代以降の大和絵の主要なジャンル一つで、障子絵屏風びょうぶに描かれた。→四季絵

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「月次絵」の意味・わかりやすい解説

月次絵 (つきなみえ)

一年12ヵ月の月ごとの行事や風俗を主題とし,そのおりおりの自然の景趣をも背景に描き込んだ絵を月次絵と称し,平安時代から鎌倉時代の主として屛風絵障子絵の主題となった。各月の情景を詠みこんだ和歌色紙形に書いて画中に加えるなど和歌と分かちがたく併存し,また歌枕などで知られた諸国名所を,それにふさわしい月の景として描く名所絵風のものもあった。月次絵の遺品はないが,その画面を詠んだ歌は多くのこり,その歌から描かれた主題などが知られる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「月次絵」の意味・わかりやすい解説

月次絵【つきなみえ】

平安時代以降の障壁画に見られる,年中行事など12ヵ月の風物を表した大和(やまと)絵四季絵名所絵などと組み合わされたものが多い。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「月次絵」の意味・わかりやすい解説

月次絵
つきなみえ

1年 12ヵ月の行事や風俗,自然の推移などを画題として選び出し,月の順に並べ描いた連作屏風や障子の各扇,各面に配されることが多い。平安時代中期 (9世紀末~10世紀) に日本の風景,風俗を描く屏風障子絵が和歌と結びついて流行したが,月次絵はその最も重要な画題であり,各画面の主題を詠んだ歌が画中の色紙形に書き添えられていた。勅撰集や私家集など同時代の歌集に収録された和歌や詞書から,豊富な月次絵の画題を知ることができる。四季絵と同義に用いられることが多い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「月次絵」の解説

月次絵
つきなみえ

やまと絵の主題。9世紀後半に始まるやまと絵障屏画(しょうへいが)は,一つのセットを構成するにあたって,推移する季節の風物や人事の情景を,12カ月の順に描きこんだ。このため四季絵・月次絵とよばれることが多く,両者の内容は基本的に同じと考えられる。また名所絵の性格をもつものでも,特定の季節のモチーフが描かれ,月次絵的性格をあわせもつことが多い。平安時代の作品は現存しないが,残された屏風歌によって,月次絵の主題や図柄を知ることができる。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の月次絵の言及

【大和楽】より

…三味線音楽の一種目。1933年大倉財閥の2代目大倉喜七郎(1882‐1963)が創始。邦楽に洋楽の発声をとり入れたもので,東明節(とうめいぶし)の影響も認められる。新邦楽の一つの典型とされ,富崎春昇(1880‐1958),宮川源司(清元栄寿郎,1904‐63),原信子(1893‐1979)らが指導者で,代表的な歌い手は岸上きみ(1898‐1962),三島儷子(1905‐88)らであった。68年2派に分裂し,三島改め大和美代葵(みよき)と大和久満(ひさみつ)(芳村伊十七,1938‐ )らの派が活躍。…

※「月次絵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android