月探査機(読み)ツキタンサキ

デジタル大辞泉 「月探査機」の意味・読み・例文・類語

つき‐たんさき【月探査機】

月あるいはその周辺宇宙空間を観測するために打ち上げられる探査機。1959年にソ連のルナ1号が初めて月面上空を飛行、69年に米国のアポロ11号人類初の月面着陸を果たした。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「月探査機」の意味・わかりやすい解説

月探査機
つきたんさき

月とその周辺環境を探査する宇宙機。

 月は地球の衛星で直径は3474キロメートル、質量は地球の81分の1で地球中心から月の中心までの平均距離は38万4403キロメートルである。月の軌道は円に近い楕円(だえん)形で自転周期は27.32日である。地球の周りを回る公転周期と完全に同期しているため、地球からは月の裏側を直接観測することはできない。ソビエト連邦(ソ連)の無人探査機ルナ2号は1959年に月に接近して月面に衝突した人類初の月探査機となった。月の裏側はルナ3号によって初めて撮影された。ルナ9号は初めて月面に軟着陸した探査機である。その後ルナ16、20、24号は月の鉱物資料を地球に持ち帰った。

 アメリカは月への無人探査機としてレンジャー計画を開始し、1961年から1965年にかけて9機の探査機を打ち上げた。続くサーベイヤー計画では、1966年から1968年にかけて7機が打ち上げられ、月への軟着陸も成功させている。アポロ11号のニール・アームストロングとエドウィン・オルドリンEdwin Eugene Aldrin Jr.(1930― )は、1969年7月20日に人類で初めて月面を歩き、多くの月の鉱物資料を持ち帰った。初めてのロボット月面車は1970年のルノホート1号(ソ連)である。1960年代なかばから1970年代なかばにかけては、世界で65回の月面着陸が行われた。とくに1971年は1年間で10回も行われたが、1976年のルナ24号を最後に月面着陸探査は中断してしまった。それ以降、ソ連は金星と国際宇宙ステーション(ISS)を、アメリカは火星およびそれ以遠を目ざすようになった。

 日本は1990年(平成2)「ひてん」を月周回軌道に投入したが、通信機器の故障で探査はできなかった。2007年(平成19)に「かぐや」を月周回軌道に投入して1年8か月にわたって観測を続け、2009年に月面に衝突してミッションを終了した。

 ESA(イーサ)(ヨーロッパ宇宙機関)は2003年に小型で安価な月周回探査機スマート1号を打ち上げ、約2年間にわたって観測を行った。

 中国は、2007年以降に月周回衛星「嫦娥(じょうが)」1号、2号、3号を打ち上げ、3号は月面に軟着陸して月面探査機「玉兎(ぎょくと)号」を切り離した。

 インド宇宙研究機関(ISRO)は、2008年に月周回衛星「チャンドラヤーン」1号を打ち上げたが通信が途絶し、10か月でミッションを終了した。

 今後の月探査計画は、アメリカでは連邦航空局FAA)が民間企業ムーン・エクスプレス社に対して、2017年の月面探査計画の許可を与えた。日本では宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))が無人月探査機「SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)」を2019年度の後半に打ち上げると発表した。韓国は2020年に独自開発の月軌道船と着陸船を打ち上げる計画を発表している。

[森山 隆 2017年6月20日]

『ポール・D・スピューディス著、水谷仁訳『月の科学――月探査の歴史とその将来』(2000・シュプリンガー・フェアラーク東京)』『青木満著『月の科学――「かぐや」が拓く月探査』(2008・ベレ出版)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「月探査機」の意味・わかりやすい解説

月探査機
つきたんさき
lunar (moon) probe

月を調べるために打ち上げる探査機のこと。月にぶつけるもの,着陸させるもの,周囲を回らせるものなどがある。アメリカでは,パイオニア,レンジャー,サーベイヤ,エクスプローラ,ルナオービターが打ち上げられ,旧ソ連には,ルナ,ゾンドがある。旧ソ連が自動惑星間ステーションと呼んでいる一連の月探査機を,西側ではルーニク Lunikと呼ぶが,これは lunar sputnik (月衛星) を縮めたもの。 1970年9月に打ち上げた 16号は,「豊かの海」に着陸,月の石を採集し,無人探査機としては,アメリカに先んじて初めて月物質の地上回収に成功した。また,20号 (1972.2.14.) は月の山の部分 (「豊かの海」と「危機の海」の間) に着陸して再び岩石を地球に持ち帰った。日本の宇宙航空研究開発機構は 2004年度以降に月面にペネトレータを打ち込んで月の内部構造を探るルナーA計画を予定している。

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百科事典マイペディア 「月探査機」の意味・わかりやすい解説

月探査機【つきたんさき】

月の成因や物質の調査,月面の観測などを目的とした探査機。ソ連のルナ,ゾンド,アポロ計画の準備となった米国のレンジャー,サーベイヤー,ルナ・オービターなどのシリーズ,およびアポロ宇宙船がある。初めて月面に到達(命中)したのはルナ2号(1959年),史上初の軟着陸は1966年のルナ9号である。アポロ宇宙船は1968年12月のアポロ8号による月周回,1969年5月の10号の月着陸船による月面15kmの高度までの降下を経て,1969年7月21日人類初の月面軟着陸に成功。ソ連のルナのシリーズは1976年ルナ24号で終了したが,この間,岩石を採取して収納したカプセルの地球への帰還,月面車の走行や月面車からのパノラマ写真の電送に成功するなど,多くの成功を収めた。

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世界大百科事典(旧版)内の月探査機の言及

【月】より

…この位置の測定は,アポロ11号が月面にレーザー光逆反射器をおいてきてからは,これを利用して行われ,位置測定の精度は格段に向上したし,月の物理的秤動のようすも明らかになってきた。【古在 由秀】
【月探査機】
 月の成因や生成の時期,あるいは月の構成物質を調査し,そして人類の他の天体への飛行を目ざして,月へ直接探査機を送る計画が1950年代末からアメリカとソ連により開始された。月へ到達するもっとも経済的な方法は,地球を回る人工衛星の楕円軌道の遠地点を月の公転軌道に接するようにして,遠地点において衛星と月を会合させるもので,この場合月までの所要時間は約120時間となる。…

※「月探査機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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