日本大百科全書(ニッポニカ) 「月山貞一」の意味・わかりやすい解説
月山貞一
がっさんさだかず
(1836―1918)
幕末から明治の刀工。近江(おうみ)(滋賀県)出身の刀工、月山貞吉の養子で、父とともに大坂で活躍した。名を弥五郎といい、号を雲竜子という。作品は備前(びぜん)伝、相州(そうしゅう)伝、山城(やましろ)伝、大和(やまと)伝に通じ、また古作奥州月山鍛冶(かじ)の特色ある綾杉(あやすぎ)肌の鍛えを行った。1876年(明治9)の廃刀令後は辛酸をなめたが、1906年(明治39)に帝室技芸員に任命される。刀身彫刻の巧者でもあり、竜、不動尊、旗鉾(はたほこ)などがある。初期の作刀には身幅の広い豪壮なものが多く、晩年には軍刀の需要に応じた細身のものが多い。子に月山貞勝、貞勝の子である月山貞一(さだいち)(1907―95)は、前銘を貞光・貴照といい1971年(昭和46)重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。
[小笠原信夫]