最高法規(読み)サイコウホウキ

デジタル大辞泉 「最高法規」の意味・読み・例文・類語

さいこう‐ほうき〔サイカウハフキ〕【最高法規】

実定法の頂点に立ち、最も強い形式的効力をもつ成文法日本国憲法憲法を国の最高法規としている。

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精選版 日本国語大辞典 「最高法規」の意味・読み・例文・類語

さいこう‐ほうき サイカウハフキ【最高法規】

〘名〙 実定法体系の頂点にあり、他のすべての法令に優先する形式的効力をもつ成文法。一般に憲法をいう。
※日本国憲法(1946)九八条「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他行為全部又は一部は、その効力を有しない」

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改訂新版 世界大百科事典 「最高法規」の意味・わかりやすい解説

最高法規 (さいこうほうき)

その実質内容において国家作用の基礎をなす法をさしていう場合もあるが,普通は,国法の諸形式のなかで最高の効力をもち,それに違反する法規範は無効と考えられるようなものを最高法規という。そのような意味での最高法規の思想は,〈古き良き法〉の支配という中世封建社会の法観念のもとで,強固に形成された。そこでは,建前として,いかなる人間の意思をもってしても動かすことのできない古来伝統の規範秩序があると考えられ,立法は,法の創造でなく,既存の法の発見であるとみなされていた。〈国王は何ぴとの下にあるべきでもないが,神と法の下にあるべきだ〉とされていたのである。近世絶対王政による国王権力の集権化が進行してもなお,身分制に基づく国政構造のゆえに,この建前が突きくずされることはなく,たとえば,フランス絶対王政のもとでも,不文の〈王国基本法lois fondamentales du royaume〉が存在するという思想があった。イギリスにおける,コモン・ロー優位の思想については,よく知られているとおりである。

 近代市民革命によって身分制秩序が原理的に否定され国家への権力集中が完成されるとともに,権力,すなわち人間の意思によって定立された成文の法規範の優位という思考が一般化する。イギリスでは議会制定法の優位(議会主権)が確立するが,アメリカ革命やフランス革命のなかで,〈議会の立法といえども従わなければならない硬性の憲法〉という観念のかたちをとって,近代的意味での最高法規の思想があらわれる。とりわけアメリカ合衆国憲法(1788)は,合衆国憲法およびそれに基づいてつくられる合衆国の法律・条約を〈国の最高法規〉と明記して(6条2項),州法に対する連邦法の優位を定め,また連邦憲法の最高法規性を司法裁判所違憲審査権によって裁判所に担保するやり方を発展させた(違憲立法審査制度)。

 日本国憲法の場合,連邦法と州法の関係という要素はないが,憲法の最高法規性を宣言する(98条1項)とともに,その最高法規性を担保すべき制度として,裁判所に違憲審査権を与えている(81条)。

 第2次大戦後の諸国では,憲法の最高法規性を前提として,裁判所による違憲審査の制度をおくことが一般化しているが,それは,憲法と下位の法規範の適合性についての公権的判断権を裁判所に与えるということを意味するのであり,そのような判断権を立法機関に与える場合には,憲法の最高法規性を前提としながらも違憲審査制が否定されることに,注意を要する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「最高法規」の意味・わかりやすい解説

最高法規
さいこうほうき
supreme law

実定法の頂点に位置し、もっとも強い形式的効力をもつ成文法の意味で、一般に憲法をさす。その思想的源流は、イギリスにおける「法の優位」の思想と不可分のものとして、専制的な政治権力を制約する高次の法の観念として成立し、この思想はアメリカ合衆国憲法第6条2項に具体化された。これが日本国憲法第10章に継受された。日本国憲法第98条1項は「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」と定めている。アメリカ合衆国憲法の場合は、それが定める連邦憲法、連邦法律、条約の最高法規性は、主として各州憲法や法律に優先することを意味するので、連邦でない日本の場合とは異なる。ところで日本の憲法について、それが最高法規であることは理の当然で、あえて明文の規定を必要としない、したがって不必要の規定である、とする見解もあるが、日本の民主主義の成熟度は、この規定を不必要とするまで確立しているとはいいがたく、そこにこの規定の存在価値があるといえる。この憲法の最高法規性を保障する制度として違憲立法審査権がある。

[池田政章]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「最高法規」の意味・わかりやすい解説

最高法規
さいこうほうき
supreme law

1国の法体系のなかで,最も強い形式的効力をもつ法のこと。日本国憲法は,「最高法規」と題する第 10章のなかで,「この憲法は,国の最高法規であって,その条規に反する法律,命令,詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は,その効力を有しない」 (98条1項) と定めているが,憲法が最高法規であるのは,成文の硬性憲法である以上当然のことである。アメリカ合衆国憲法には,連邦の憲法,法律および条約は国の最高法規であるとする規定 (6条2項) があるが,それは,要するに連邦の法が州の法に優越することを明らかにするもので,日本国憲法のいう最高法規にはもとよりそのような趣旨はない。憲法の最高法規性は,裁判所のもつ違憲審査権 (日本国憲法 81) (→司法審査 ) によって具体的に保障されている。なお,最高法規である憲法が国際法といかなる関係にあるかについては,国内法優位説国際法優位説との対立がある。

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