精選版 日本国語大辞典 「曲事」の意味・読み・例文・類語
くせ‐ごと【曲事】
〘名〙
① 曲がったこと。道理にそむいたこと。ひがごと。
※栂尾明恵上人遺訓(1238)「末代は曲事(クセゴト)月に随ひ年に添て〈略〉誠しき心立したるは少なし」
② してはならない、とんでもないこと。にがにがしいこと。けしからぬこと。
※古今著聞集(1254)一六「いまかた皮をば、わがはくべき物とも思はで、『あれをばさて、たがはき候はんぞ』と人に問ひたりける、ただ同じほどのくせ事なり」
※虎明本狂言・富士松(室町末‐近世初)「只今もいふたにくせ事なやつじゃ」
③ 不吉な事。凶事。災い。
※万治版宇治拾遺(1221頃)六「ゆゆしきくせごと出来候はんずると申して出ぬ」
④ めずらしいこと。妙なこと。珍事。
※古今著聞集(1254)一〇「此馬に乗て、二たび高名せられたりける、くせ事になん申しあへりける」
⑤ 法にそむいた行為。きょくじ。
※東寺百合文書‐を・宝徳二年(1450)九月一六日・三浦為継書状「私之事預御切檻候、言語道断九世事にて候」
⑥ 法にそむいた者を処罰すること。処分。きょくじ。
※叢書本謡曲・弁内侍(室町末)「真直(まっすぐ)に申し候へ。少しも偽らば重く曲事すべし」
きょく‐じ【曲事】
〘名〙
① 不正なこと。法にそむいたこと。ひがごと。くせごと。〔いろは字(1559)〕〔陽固‐疾倖詩〕
② 近世の法律用語。不正や、法にそむいたこと。また、その罪を処罰すること。
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