暖簾に腕押し(読み)のれんにうでおし

精選版 日本国語大辞典 「暖簾に腕押し」の意味・読み・例文・類語

のれん【暖簾】=に[=と]腕押(うでお)

力を入れても少しも手ごたえのないこと。張り合いのないことのたとえ。
※鶏(1909)〈森鴎外〉「暖簾(ノレン)腕押をしたやうな不愉快な感じをしたであらう」

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デジタル大辞泉 「暖簾に腕押し」の意味・読み・例文・類語

暖簾のれん腕押うでお

少しも手ごたえや張り合いがないことのたとえ。
[類語]馬耳東風馬の耳に風馬の耳に念仏犬に論語牛に経文牛に対してことを弾ず兎に祭文ぬかに釘豆腐にかすがい石にきゅう石に針沢庵たくあんのおもしに茶袋汽車の後押し網の目に風とまらず籠で水を汲む屋上おくを架す屋下に屋を架す月夜に提灯ちょうちん闇の夜の錦泥田を棒で打つ竹藪に矢を射るよう死に馬にはり氷にちりば泥裡でいり土塊どかいを洗う権兵衛が種蒔きゃからすがほじくる骨折り損の草臥くたびもう

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ことわざを知る辞典 「暖簾に腕押し」の解説

暖簾に腕押し

正面から向かっていってもまるで手ごたえがなく、拍子抜けすることのたとえ。また、いくら言っても誠実に受け答えせず、らちがあかないことのたとえ。

[使用例] 奉公人への指図はもちろん、旅客の応待から船頭物売りほかに、あらくれかきを相手気苦労もあった。〈略〉しかし、女中に用事もの一つ言いつけるにも、まずかんにんどっせと謝るように言ってからという登勢の腰の低さには、どんなあらくれも暖簾に腕押しであった。[織田作之助*蛍|1944]

[使用例] 養父に向かって、はじめに激しい言葉を投げつけるのは決まって母のほうからだった。それものれんに腕押し、母はいつも一人相撲をとっていた。[高峰秀子*わたしの渡世日記|1976]

[解説] 「暖簾」は、室町時代から使われたことばで、古くは「のんれん」や「のうれん」「なんれん」といいました。この場合は、日除けと店の看板を兼ねた外暖簾(店暖簾)のことで、江戸時代の大店では、何枚もの布を縫ってつないだ(下方は縫わずに、ひるがえるようにしておく)大きなものが掲げられていました。「腕押し」は腕相撲のことで、暖簾を相手に力ずくで押したり、立ち向かってみても、どうにも手ごたえがないのは当然でしょう。想像力にうったえ、体感できそうに感じられる巧みな比喩で、「腕押し」のほか、かつては「相撲」「すね押し」(足相撲のこと)などとする異形も使われていました。
 比喩としては、「糠に釘」や「豆腐かすがい」と同様に、力を込めても徒労に終わることですが、ニュアンスは微妙に異なります。「糠」や「豆腐」と違って、「暖簾」の場合は、どうも相手のほうが一枚上手で、うまくあしらわれる感じが否めないのです。

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