暖水塊(読み)だんすいかい(英語表記)warm-core ring

改訂新版 世界大百科事典 「暖水塊」の意味・わかりやすい解説

暖水塊 (だんすいかい)
warm-core ring

海洋中に散在する周囲より高温海水の塊。ふつう,直径100kmから200km程度の円形状をなし回転運動を伴っており,暖水渦ともいう。かつては海洋はかなり大規模な範囲にわたって均質な性質をもつと考えられていたが,最近20年ほどの海洋観測法の進歩とともに,海洋にはさまざまな空間スケールと時間スケールの変動が存在することが知られるようになった。そのなかで最も顕著なのが黒潮湾流のような海流の変動によって生じる暖水塊冷水塊である。海洋中に高温域が孤立して生じると高温部は北半球では時計回り南半球では反時計回り)に回転する。その理由は,地球が自転しているために発生するコリオリの力が水の圧力傾度力とつりあうように働くためである(これを地衡流バランスという。図)。暖水塊は黒潮や湾流が蛇行してその一部が切り離されて源となると考えられている。このような西岸境界流に伴う渦とは別個に,大洋中に海面から海底まで直立した柱のような大きな渦(直径200km程度)があることが知られているが,こちらはふつう,中規模渦と呼んで区別している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「暖水塊」の意味・わかりやすい解説

暖水塊
だんすいかい
warm water mass

周囲より温度の高い海水の塊で、黒潮や黒潮続流ガルフストリーム系にみられる直径200~300キロメートル程度の孤立水塊をいう。黒潮系を例にとると、暖水塊は、紀州沖、遠州灘(なだ)の大冷水塊ほど恒常的でなく、寿命も短い。黒潮、ガルフストリームなどが大きく蛇行する際、暖水を抱き込んだ渦が切り離されてできた孤立水塊と考えられる。全体として北半球では時計回り(高気圧性)に回転している。水平方向の広がりは冷水塊とほぼ同じだが、深さは冷水塊より浅いことが多い。

 「暖水域」という用語は、水温の偏差が平年値より高い海域をさす。孤立した暖水塊より面積ははるかに広い。エルニーニョ現象の際には、東太平洋赤道付近に広大な暖水域が広がる。

[半澤正男・高野健三]

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