あか‐つき【暁】
〘名〙 (「あかとき」の変化した語)
① 夜半過ぎから
夜明け近くのまだ暗いころまで。未明。また、夜明けに近い時分。現在では、明け方のやや明るくなった時分をいう。
※書紀(720)仁徳三八年七月(前田本訓)「時に二の鹿、傍に臥せり。鶏鳴(アカツキ)に及ばむとして牡鹿(しか)牝鹿(めか)に謂ひて曰く」
※源氏(1001‐14頃)葵「あか月深くかへり給ふ」
※枕(10C終)一一九「たてへだてゐて、うち行ひたる
あかつきの額
(ぬか)など、いみじうあはれなり」
③ 香木の名。分類は伽羅(きゃら)。
④ ある物事が実現したその時。また、物事の解決、処理。始末。
※歌舞伎・与話情浮名横櫛(切られ与三)(1853)五幕「コウ伴頭さん、いいかげんに往生しなせへ。此暁(アカツキ)はどうしてくれるよ」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉九「もし主人の様な人間が教師として存在しなくなった暁には」
[語誌](1)上代には「あかとき」で、中古以後「あかつき」となって今日に及ぶ。もともとは、夜を三つに分けたうちの「宵」「夜中」に続く部分をいったが、明ける一歩手前の頃をいう「しののめ」、空が薄明るくなる頃をいう「あけぼの」が、中古にできたために、次第にそれらと混同されるようになった。
(2)中古では「あかつき」は歌・散文の双方に用いられるが、「あけぼの」は基本的には文章語(中世和歌には多い)、「しののめ」は歌語である。通い婚の
習俗では、「あかつき」は男が女と別れて帰る
刻限であり、「あかつきの別れ」などの表現もある。一方、男が訪れるのは「よい」であり、「よいあかつき」と熟した例も見られる。
あか‐とき【暁】
※
万葉(8C後)一五・三六六五「妹を思ひ眠
(い)の寝らえぬに安可等吉
(アカトキ)の
朝霧ごもり雁がねそ鳴く」
[語誌]中古以降「あかつき」に転じる。「五更露爾
(あかときつゆに)」(万葉‐二二一三)、「鶏鳴露爾
(あかときつゆに)」(万葉‐一〇五)等の表記がなされるとおり、
夜明け前の未だ暗い頃をさすと見られ、
上代語の「あさけ」や中古以降の「あけぼの」よりも一段早い時間帯であった。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「暁」の意味・読み・例文・類語
あかつき[金星探査機]
平成22年(2010)5月、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が打ち上げた日本初の金星探査機PLANET-Cの愛称。赤外線・紫外線などの各種カメラを搭載し、金星上空の広範囲で吹くスーパーローテーションや、上空から表面近くまでの硫酸の雲で覆われた大気の動きを詳細に観測している。同年12月に金星の周回軌道への投入を試みたが、主エンジンの故障により失敗、太陽周回軌道に入った。平成27年(2015)12月、姿勢制御用の小型エンジンの噴射により、金星周回軌道への投入に成功した。
あか‐とき【▽暁】
《「明時」の意で、「あかつき」の古形》夜半から明け方までの時刻。また、夜明け方。
「秋の夜は―寒し白たへの妹が衣手着むよしもがも」〈万・三九四五〉
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あかつき【暁】
宮崎の米焼酎。酒名は、小さい酒蔵は朝早くから勤勉に働かなければいけないという戒めにより命名。常圧蒸留で昔ながらの個性の強い酒質を守る。原料は米、米麹。アルコール度数20%、25%、35%。蔵元の「アカツキ酒造」は昭和9年(1934)創業。所在地は西臼杵郡高千穂町大字河内。
あかつき【暁】
滋賀の日本酒。蔵元の「暁酒造」は慶長元年(1596)創業。所在地は野洲市小篠原。
出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報
世界大百科事典内の暁の言及
【茶事】より
…今日では夏季のもので,早朝の清涼感を演出する。(4)暁 夜込(よごみ)ともいった。午前4時ころから夜明けの曙光を風情とする。…
※「暁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報