春霞(読み)はるがすみ

精選版 日本国語大辞典 「春霞」の意味・読み・例文・類語

はる‐がすみ【春霞】

(古くは「はるかすみ」)
[1] 〘名〙 春に立つ霞(かすみ)。古来、春の景物として歌や句によみ込まれることが多い。《季・春》
※歌経標式(772)「あをによし奈良山峡(か)ひよ白妙に此のたなびくは婆留加須美(ハルカスミ)なり」
[2]
同音の繰り返しで、地名春日(かすが)」「かすみの浦」にかかる。
万葉(8C後)三・四〇七「春霞春日の里の植ゑ小水葱(こなぎ)苗なりと言ひし柄はさしにけむ」
② かすみが居(い)る意で、「居(ゐ)る」の「居」と同音の「井」にかかる。
※万葉(8C後)七・一二五六「春霞井の上(へ)ゆ直(ただ)に道はあれど君に逢はむとたもとほり来(く)も」
③ かすみが立つ意で、「立つ」と同音の「起つ」「発つ」や、地名「龍田」などにかかる。
古今(905‐914)雑下・九九九「人知れず思ふ心は春かすみ立ち出でて君が目にも見えなむ〈藤原勝臣〉」
④ かすみがたなびく意で、「たなびく」の「たな」と同音「たな」を含む「棚無し小舟」にかかる。
※新勅撰(1235)恋二・七六五「はるかすみたななし小舟入江こぐ音にのみ聞く人を恋ひつつ〈寂延〉」
⑤ かすみが敷く意で、「敷く」や「しく」と同音を含む語にかかる。
※続後撰(1251)春上・三九「たとふべきかたこそなけれ春霞しきつの浦のあけぼのの空〈藤原兼実〉」
⑥ かすみがかかって直接に物が見えないところから、「よそに」にかかる。
※古今(905‐914)雑体・一〇〇一「白妙の 衣の袖に 置く露の 消(け)なば消ぬべく 思へども 猶歎かれぬ はるかすみ よそにも人に 逢はんと思へば〈よみ人しらず〉」
[語誌]「万葉集」では春以外の季節に霞が詠まれる場合もあるが、「昨日こそ年は果てしか春霞(はるかすみ)春日の山にはや立ちにけり」(一八四三)のように、立春とともに霞が現われるという見方もすでにあり、平安期以降の和歌や物語は後者をもっぱら継承した。

しゅん‐か【春霞】

〘名〙 春のかすみ。はるがすみ。
※善秀才宅詩合(963)紅霞間緑樹〈源為憲〉「春樹春霞无定粧、霞紅樹緑錦成章」 〔張融文‐海賦

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デジタル大辞泉 「春霞」の意味・読み・例文・類語

はる‐がすみ【春×霞】

《室町時代ごろまでは「はるかすみ」》
[名]春の霞。 春》洛陽朝餉あさげ過ぎたり―/蓼太
[枕]同音の繰り返し、また、霞のかかっている状態から、「春日かすが」「立つ」「井上ゐのへ」などにかかる。
「―春日の里の植ゑ小水葱こなぎ」〈・四〇七〉
「―井の上ゆただに道はあれど」〈・一二五六〉
[類語]ガススモッグ雲霞朝霞夕霞煙霞

しゅん‐か【春×霞】

春のかすみ。はるがすみ。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「春霞」の解説

はるかすみ【春霞】

秋田日本酒。酒名は、謡曲羽衣」の一節「春霞たなびきにけり久方の」からとり命名純米大吟醸酒、大吟醸酒純米吟醸酒、吟醸酒、純米酒本醸造酒などをそろえる。平成1、2、4、5、11、12、15、16、18年度全国新酒鑑評会で金賞受賞。原料米は酒こまち、山田錦など。仕込み水は奥羽山脈の伏流水。蔵元の「栗林酒造店」は明治7年(1874)創業。仕込み蔵はトンネル状に100mほど続き、「一本蔵」と呼ばれている。所在地は仙北郡美郷町六郷字米町。

出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報

デジタル大辞泉プラス 「春霞」の解説

春霞(はるかすみ)

秋田県、合名会社栗林酒造店の製造する日本酒。純米大吟醸酒「黒」「白」、純米酒「赤」、純米吟醸酒「緑」などがある。

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普及版 字通 「春霞」の読み・字形・画数・意味

【春霞】しゆんか

春がすみ。

字通「春」の項目を見る

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