春日造(読み)かすがづくり

精選版 日本国語大辞典 「春日造」の意味・読み・例文・類語

かすが‐づくり【春日造】

〘名〙 神社本殿形式一つ奈良春日大社本殿の桁行(けたゆき)一間、奥行一間、妻入りで、前に向拝を付けたものを基本形式とする。近畿地方に多い。皇子造(おうじづくり)。向妻造(むこうづまづくり)。〔神道名目類聚抄(1699)〕

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デジタル大辞泉 「春日造」の意味・読み・例文・類語

かすが‐づくり【春日造(り)】

神社本殿形式の一。切妻造り妻入りで、正面階隠はしかくをつけ、棟には置き千木ちぎ鰹木かつおぎを置く。奈良時代に完成したものという。春日大社本殿がその代表例。

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百科事典マイペディア 「春日造」の意味・わかりやすい解説

春日造【かすがづくり】

奈良の春日大社の本殿に代表される神社建築の一形式。母屋は切妻屋根もち,正面に高欄つきの木階をかける。階の上には片流れ階隠(はしかくし)を構え,屋根は軒(のき)の部分で連続する。小規模の造りものが多い。
→関連項目円成寺堅魚木吉田神社

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「春日造」の意味・わかりやすい解説

春日造
かすがづくり

奈良の春日大社本殿にみられるような神社本殿の形式。切妻(きりづま)造、妻入りの建物の前面に階隠(はしかくし)の庇(ひさし)をつけた形になる。一般に小規模になるため、土台建てが多い。前面の庇の両端は本体の妻の破風(はふ)板に取り付けて、縋(すがる)破風の屋根になるのが正規の手法であるが、正面両隅に隅木(すみき)を入れて軒を入母屋(いりもや)風に回すものもあり、後者隅木入り春日造と呼び分けている。

[工藤圭章]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「春日造」の意味・わかりやすい解説

春日造
かすがづくり

春日大社本殿に代表される神社本殿の形式の一つ。最古の例は円成寺の春日堂,白山堂であるが,仏教建築影響を受け,奈良時代中期に現れたと考えられている。切妻造の妻入りで,正面に片流れの庇 (ひさし) が接続する。近畿地方にこの形式が多い。

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旺文社日本史事典 三訂版 「春日造」の解説

春日造
かすがづくり

奈良市春日神社本殿に代表される神社建築の一様式
大社造 (たいしやづくり) から発展した切妻造。妻入りの社殿にひさしをつけたもので,平入りの流造 (ながれづくり) とともに全国に普及した。奈良市円成寺の春日堂・白山堂が現存最古。

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世界大百科事典(旧版)内の春日造の言及

【春日大社】より

…やがて841年(承和8)春日山を神山とする勅命が発せられ,それ以降藤原氏氏長者(うじのちようじや)は同氏の繁栄を祈って春日祭祀の振興や春日社の拡充に着手した。春日祭に斎女が加えられ2月,11月の2季の盛儀としたのに始まり(申の日が祭日なので申祭(さるまつり)という),春日(かすが)造の4神殿のほか社殿を増築,境内地を大拡充して9世紀末にはほぼ現状に近い盛観を示した。摂政・関白・氏長者として栄華をきわめる藤原氏北家(摂関家)はすべて春日大明神の威徳によるものとして春日社の祭祀に努めたのである。…

【鎌倉時代美術】より

…三間社流造は苗村神社(滋賀),宇治神社(京都),住吉神社(兵庫),神谷神社(香川)の4例である。春日造本殿は基本形より発達した隅木入春日造が出現している(山梨熊野神社)。特殊な例では入母屋造本殿(滋賀御上神社),切妻造本殿(滋賀天皇神社)がある。…

【神社建築】より

…したがってやがて神の象徴が建築の形をとるようになるとしても,最初はきわめて素朴なものであった可能性が強い。 現存する本殿形式のうち,最初に姿を現した建築を示唆するのは,流(ながれ)造系ならびに春日造系の社殿である。現在,国宝あるいは重要文化財に指定されている本殿を分類すると,流造に属するものが総数の55%を超え,春日造がそれに次ぐ(表)。…

【屋根】より

神社建築でも屋根の形式からみると,権現造は入母屋造の本殿と拝殿を幣殿でつないだもので,この場合,幣殿の屋根は両下(りようさげ)造(切妻造の妻がないような形式)という。春日造は切妻造妻入の正面に庇をつけたもの,流造は切妻造の正面だけが前方に長く延びたものである。また流造や入母屋造に,据破風や軒唐破風をつけた複雑なものもある。…

※「春日造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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