春日権現霊験記(読み)かすがごんげんれいげんき

精選版 日本国語大辞典 「春日権現霊験記」の意味・読み・例文・類語

かすがごんげんれいげんき【春日権現霊験記】

絵巻物。絹本着色。全二〇巻。目録一巻。絵は高階隆兼詞書鷹司基忠、冬平、冬基、良信僧正の父子四人の筆。西園寺公衡発願で延慶二年(一三〇九春日大社に奉納された。内容は春日明神の由来と霊験に関する五八編の物語をつづったもので、当時の風俗資料ともなっている。春日権現験記絵詞。春日権現験記。春日験記。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「春日権現霊験記」の意味・わかりやすい解説

春日権現霊験記
かすがごんげんれいげんき

絵巻。20巻。御物国宝。「春日権現験記」「春日験記」とも略称する。もと春日神社の所蔵であったが、のち皇室に献納された。1309年(延慶2)3月、左大臣西園寺公衡(さいおんじきんひら)が春日権現の宝前に納めたもので、藤原氏の氏神である春日明神に関する霊験奇瑞(きずい)の数々を描いている。春日の社頭の光景がしばしば描出され、また春日明神の託宣夢想がこの絵巻の大部分を占める。絵は全巻高階隆兼(たかしなたかかね)の筆、詞(ことば)は前関白鷹司基忠(たかつかさもとただ)(1247―1313)とその子摂政(せっしょう)冬平(1275―1327)、権大納言(ごんだいなごん)冬基、興福寺一乗院良信(りょうしん)僧正(1278―1329)の四筆からなる。絵は絹地に謹厳な筆で、一線一画もおろそかにせず描写は細緻(さいち)を極め、色彩もきわめて濃麗で、ときに絢爛(けんらん)目を奪うものがある。大和絵(やまとえ)の古典美を再現する傑作であり、当時の風俗を知る好資料として価値が高い。なお、高階隆兼は当時宮廷絵所預(えどころあずかり)で、右近将監(うこんしょうげん)であったことが知られるが、そのほか詳伝は明らかでない。

[村重 寧]

『野間清六編『新修日本絵巻物全集16 春日権現験記絵』(1978・角川書店)』


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