明日香(村)(読み)あすか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「明日香(村)」の意味・わかりやすい解説

明日香(村)
あすか

奈良県中部、高市(たかいち)郡にある村。1956年(昭和31)高市、飛鳥(あすか)、阪合(さかあい)の3村が合併し、新村名を『万葉集』にみられる同地の呼称明日香」からとった。飛鳥川上流域を占め、竜門(りゅうもん)山地北斜面から奈良盆地南東部に及ぶ。飛鳥川流域の平坦(へいたん)部には耕地が開け、丘陵、山地部でも所々に畑がみられ、農山村が点在する。中心集落は岡(役場所在地)と飛鳥である。村の西部を近畿日本鉄道吉野線と国道169号が通じる。飛鳥時代から694年(持統天皇8)藤原京遷都まで幾度となく皇居が置かれた地で、村内至る所に古墳史跡が散在する。1972年(昭和47)の発掘調査で発見された極彩色壁画の高松塚古墳(1973年特別史跡、極彩色壁画は1974年国宝)をはじめ、石舞台古墳(特別史跡)、天武(てんむ)天皇伝承地(飛鳥浄御原宮(きよみはらのみや))、飛鳥宮跡(史跡。伝飛鳥板蓋(いたぶき)宮跡)や、飛鳥寺跡(史跡。安居(あんご)院)、岡寺(書院仁王門は重要文化財、岡寺跡は史跡)、橘(たちばな)寺(境内は史跡)、川原寺跡(史跡)などの寺院、酒船石(史跡)などの石造遺物など(以上、国指定)がある。1980年には「明日香保存特別措置法」が公布された。この地を舞台に古代の日本史を彩る諸事件が生起したのみならず、幾多の万葉秀歌に詠まれ、日本人の魂の故郷(ふるさと)として一年中訪れる人が絶えない。1975年飛鳥資料館(奈良文化財研究所所属)、1977年高松塚壁画館が開館した。また、甘橿丘(あまかしのおか)、高松塚、石舞台、祝戸(いわいど)の周辺は国営飛鳥歴史公園となっている。なお、1998年(平成10)にキトラ古墳(2000年特別史跡、2019年壁画4面と天井画が国宝に指定)でも極彩色壁画が発見された。2月の第1日曜日に飛鳥坐(あすかにいます)神社で「おんだ祭」(お田植神事)が行われる。特産品はミカン、イチゴ、カキシイタケ蔬菜(そさい)、蜂蜜(はちみつ)などである。面積24.10平方キロメートル、人口5179(2020)。

[菊地一郎]

『『明日香村史』全3巻(1974・明日香村史刊行会)』


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