知恵蔵 「日EU経済連携協定」の解説
日EU経済連携協定
EUから日本への輸出品の関税については、最大の焦点だったチーズ(現行は原則29.8%)が今後15年で段階的に撤廃され、ワイン(15%または1リットル125円)は発効後に即時撤廃される見通し。パスタやチョコレートなどは10年、豚肉は段階的に10年、皮革製品も10年または15年で撤廃される予定。チーズや豚肉などは、輸入総額に占める割合は小さいものの、関税撤廃による国内の酪農・畜産業に与える影響は大きく、生産農家への打撃が心配されている。一方、日本からEUへの輸出品の関税については、最大の輸出品目である自動車(現行10%)が7年で撤廃、自動車部品(現行3~4.5%)は約9割が即時撤廃される見通し。テレビは5年後に撤廃、日本酒、緑茶、調味料(しょうゆ)、青果物、肉類・乳製品などは即時撤廃される。
EPA(経済連携協定)の交渉対象は、FTA(自由貿易協定)よりも幅広く、貿易分野に加えて、金融・投資や情報通信、さらに特許、商標、GI(地理的表示)などの知的財産も含まれる。今回の合意によって、チーズでは普通名詞ではないゴルゴンゾーラ(イタリア)やフェタ(ギリシャ)などは、「○○風ゴルゴンゾーラ」といった名称でも許されず、現地の産品にしか使用できなくなる。
なお現時点(17年8月末)では、日欧の首脳が「大枠合意」に至ったに過ぎない。今後、国会と欧州議会の合意、さらにEU加盟国(現在28か国)の承認が必要で、発効までには、さまざまな曲折が予想されている。
(大迫秀樹 フリー編集者/2017年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報