日高川(読み)ひだかがわ

精選版 日本国語大辞典 「日高川」の意味・読み・例文・類語

ひだか‐がわ ‥がは【日高川】

[1]
[一] 和歌山県中央部を西流する川。奈良県との境にある護摩壇山に発し、曲流して御坊市紀伊水道に注ぐ。水力発電に利用。全長一一五キロメートル。
[2] 〘名〙 安珍・清姫の伝説に基づく浄瑠璃・歌舞伎をいう。道成寺物

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デジタル大辞泉 「日高川」の意味・読み・例文・類語

ひだか‐がわ〔‐がは〕【日高川】


和歌山県中部を流れる川。奈良との県境にある護摩壇ごまだん山に源を発して南流したあとほぼ西流し、御坊市で紀伊水道に注ぐ。長さ115キロ。
和歌山県中部の町。の中流域を占める。
浄瑠璃日高川入相花王ひだかがわいりあいざくら」、およびその四段目の通称。
浄瑠璃・歌舞伎で、道成寺どうじょうじ伝説を主題としたもの。道成寺物

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日本歴史地名大系 「日高川」の解説

日高川
ひだかがわ

日高郡を東から西に貫流、名称はこの郡名による。川名は「中右記」天仁二年(一一〇九)一〇月一九日条に「過道場寺前、渡日高川河水大出」とみえるのが早い。

紀和国境の最高峰護摩壇ごまだん(一三七二メートル)に発し、南流して龍神りゆうじん小森こもりに下る。小森谷には赤坪あかつぼ白坪しろつぼ右衛門えもん越戒えつかい(海)の四つの滝がある。さらに龍神村東部を南流、同村西部に入って北に転じ、美山みやま村南西部で西に流路を変え、その後、蛇行しつつもほぼ西流を保ち、中津なかつ村・川辺かわべ町を経て御坊市と美浜みはま町の境界辺りで太平洋に注ぐ。流程一一五キロ、流域面積は約六八一平方キロ。日高郡のうち南部川みなべがわ村・南部町・印南いなみ町および海岸の一部を除きほとんどが日高川流域に含まれる。おもな支流は上流龍神村内で合流する小又こまた川・丹生にうノ川、美山村そう川・初湯うぶゆ川、下流の川辺町で江川えかわ川、河口近くで西にし川がある。そのほか上流域の寒川が川の転語とされるように多くの小支流がある。

護摩壇山・じようもり山・寒川辻そうがわつじ清冷せいれい山・牛廻うしまわし山など流域にある山々は、「続風土記」が日高の郡名起源として「四方に山はあれと峰高からぬ地の称名」と記すように山頂が平坦で全体として高さもほぼ等しい。これは、浸食によって一度平坦となった地が再び隆起して現在のようになったことを示し、日高川の曲折の多いのは平坦になった時蛇行するようになった流路が隆起後も残ったためで、川に囲まれる環流丘陵と河岸段丘をつくりだしている。

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改訂新版 世界大百科事典 「日高川」の意味・わかりやすい解説

日高川[町] (ひだかがわ)

和歌山県中央部,日高郡の町。2005年5月川辺(かわべ)町,中津(なかつ)村,美山(みやま)村が合体して成立した。人口1万0509(2010)。

日高川町西端の旧町。日高郡所属。人口6904(2000)。日高川が紀伊山地西縁の白馬(しらま)山脈を抜け,御坊平野に出る所に位置する。町域は山がちで,河川沿いの河岸段丘に集落が点在する。町の南西寄りをJR紀勢本線が通り,阪和自動車道のインターチェンジがある。古くからナツミカンの特産地で,山地の斜面はミカン園でおおわれるが,近年,野菜栽培の導入が図られている。増産されるミカン対策としてジュースなどの工場が立地する。能や歌舞伎で有名な天台宗の名刹道成寺が町域西端にあり,道成寺の本堂,仁王門,木造十一面観音立像,道成寺縁起などは重要文化財。

日高川西部の旧村。日高郡所属。人口2538(2000)。紀伊山地西縁の白馬山脈中にあって,中央を日高川が流れる。日高川の本支流沿いにわずかの低地があり,集落が点在する。江戸時代,船津は日高川舟運の中継地であった。農林業が基幹産業で,かんきつ類,イチゴ,野菜の栽培,養豚が行われる。日高川は蛇行が著しく,頸状部には湾曲による水位差を利用した発電所がある。

日高川町東部の旧村。日高郡所属。人口2165(2000)。紀伊山地にあって,周囲には標高800~1000m級の山が連なり,日高川に,山間を縫って初湯(うぶゆ)川,愛(あたい)川などが流入する。村域のほとんどが森林に覆われ,林業を基幹産業とし,杉,ヒノキなどの建材を産出,シイタケ栽培も行われる。昭和30年代から過疎化が進んでいる。村域南西部の清冷(せいれい)山(878m)北麓に,日高川の水をせき止める県営の多目的ダム椿山(つばやま)ダム(1988完成)がある。上阿田木(かみあたぎ)神社の春の花祭,下阿田木神社の正月のお弓神事,寒川(そうがわ)神社の秋の寒川祭など,当地には古式を伝える祭事が残る。
執筆者:

日高川 (ひだかがわ)

奈良・和歌山県境の護摩壇(ごまだん)山(1372m)に源を発し,和歌山県の旧日高郡を東から西へ貫流,御坊市で紀伊水道に注ぐ川。全長115km,流域面積681km2。上流部の撓曲(とうきよく)運動のため下方浸食が激しく,激しい穿入(せんにゆう)蛇行がみられ,上流部には準平原の遺物が1000m余りの高さで残る。上流の谷頭斜面は杉やヒノキの宝庫で,木材はいかだに組んで流下させていた。〈日高川五滝〉と称される大滝をはじめ各所に急流があり,とくに上流にある田辺市の旧竜神村の檜皮(ひわだ)滝はいかだ流しにとって最大の難所であった。古く《日本霊異記》に775年(宝亀6)の日高川大洪水のことがみえるが,1953年7月にも未曾有の大水害があり,以後いかだも姿を消した。椿山(つばやま)ダムの建設によって,上流の竜神村から美山村(現,日高川町)にかけて168戸が水没し移転した。なお日高川は安珍・清姫の伝説の舞台としても知られる。
執筆者:

日高川(芸能) (ひだかがわ)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「日高川」の意味・わかりやすい解説

日高川
ひだかがわ

和歌山県中央部を西流する川。奈良県境の護摩壇(ごまだん)山(1372メートル)に源を発して西流、御坊(ごぼう)市で太平洋に注ぐ。延長115キロメートル、流域面積681平方キロメートル。上流に龍神(りゅうじん)温泉があり、中流は極端な穿入(せんにゅう)蛇行をなし、下流には県下第二の日高平野が開け、河口に日高港がある。流域山地の木材は御坊市に集まる。毎年のように水害が生じ、1988年(昭和63)洪水調節用の椿山(つばやま)ダム(日高郡美山(みやま)村、現日高川町)がつくられたが、ダム建設のため180戸余が水没した。なお、日高川は安珍(あんちん)・清姫の道成寺(どうじょうじ)物でも有名。

[小池洋一]

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百科事典マイペディア 「日高川」の意味・わかりやすい解説

日高川【ひだかがわ】

和歌山県中部の川。長さ115km。奈良県境の護摩壇山に発して南西に流れ,次いで北流し再び南西に向かい御坊市で紀伊水道に注ぐ。蛇行(だこう)が著しい。《日本霊異記》《中右記》に洪水のことがみえ,《紀伊名所図会》に筏(いかだ)下しが描かれる。灌漑(かんがい),水力発電に利用。上流域に竜神温泉がある。
→関連項目川辺[町]紀伊山地高野竜神国定公園

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日高川」の意味・わかりやすい解説

日高川
ひだかがわ

和歌山県中部の川。奈良県との県境にある護摩壇山 (1370m) に源を発して南西流,のち北流,西流して御坊市市街地南部で太平洋に注ぐ。全長 115km。中流は典型的な穿入蛇行をなし,下流では日高平野を形成。中流に 1988年椿山ダムが完成して治水,利水に役立っている。上・中流域は木材の産地で,かつては筏流しによる木材輸送路であったが,現在はトラックによる輸送に代った。上流域に龍神温泉があり,付近一帯は高野龍神国定公園に属する。下流域には安珍・清姫の伝説で知られる道成寺がある。

日高川
ひだかがわ

道成寺物」のページをご覧ください。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「日高川」の解説

日高川
(通称)
ひだかがわ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
けいせい日高川 など
初演
享保20.1(京・榊山四郎太郎座)

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