日本駄右衛門(読み)にっぽん・だえもん

朝日日本歴史人物事典 「日本駄右衛門」の解説

日本駄右衛門

河竹黙阿弥作の歌舞伎狂言青砥稿花紅彩画」(1862年初演)に登場する,いわゆる白浪五人男首領延享(1744~48)ごろに実在した浪人あがりの盗賊浜島庄兵衛がそのモデルといわれる。庄兵衛は当時大坂豊竹座の浄瑠璃「風俗太平記」に出てくる賊徒日本左衛門の名をとって名乗っていたといい,こうした実説は早くも宝暦13(1763)年歌舞伎に仕組まれ,日本駄右衛門の名はこのときに始まった。「盗みはすれど非道はせず」という義賊ぶりは当時の風潮だった富豪への反感を反映しており,のちの鼠小僧などを生む因となったが,「もはや四十に人間の定めはわずか五十年」といった無常観には黙阿弥の人生観が裏打ちされている。

(上村以和於)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「日本駄右衛門」の解説

日本駄右衛門 にっぽん-だえもん

歌舞伎「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」の登場人物。
白浪五人男の首領。日本六十余州をあらしまわった大盗賊。女装した弁天小僧にゆすられた浜松屋をたすけるとよそおって大金をうばおうとする。しかし浜松屋の養子宗之助が実のわが子とわかり,その場を退散するがのち捕らえられる。河竹黙阿弥の作で,文久2年(1862)江戸市村座初演。別外題は「弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「日本駄右衛門」の解説

日本駄右衛門
(通称)
にほんだえもん

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
秋葉権現廻船語
初演
宝暦11.12(大坂・三桝大五郎座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の日本駄右衛門の言及

【盗賊】より

…著名な盗賊鼠小僧次郎吉は,諸大名を中心に延べ100余軒の武家屋敷から計3000余両を盗み,1832年(天保3)に獄門に処せられたが,義賊であったという証拠はない。歌舞伎の白浪物は盗賊を美化して描いているが,なかでも《白浪五人男》の日本駄右衛門は,東海道を荒らし回った大盗賊団の首領で,1747年(延享4)に獄門となった浜島庄兵衛(異名,日本左衛門)をモデルとしている。大凧に乗って名古屋城の金鯱(きんしやち)を盗んだという伝説がつくられた柿木金助は,尾張国中島郡柿木島村の生れで,多数の手下とともに豪農豪商の家へ盗みに押し入ることを重ねたが,1763年(宝暦13)名古屋町中引廻しのうえ獄門となった。…

※「日本駄右衛門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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