日本遺産(読み)ニホンイサン

デジタル大辞泉 「日本遺産」の意味・読み・例文・類語

にほん‐いさん〔‐ヰサン〕【日本遺産】

日本の歴史的・文化的な一連の物語性をもつ文化財群として、文化庁認定するもの。平成27年(2015)4月に「近世日本の教育遺産群―学ぶ心・礼節本源―(茨城栃木岡山大分)」「日本茶800年の歴史散歩(京都)」「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市広島)」など18件が認定を受けた。以降、令和2年(2020)までに104件が認定されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本遺産」の意味・わかりやすい解説

日本遺産
にほんいさん

各自治体から申請された歴史的経緯や、地域の風土に根ざした伝承風習を踏まえた「ストーリー」を、文化庁が認定する遺産。2015年度(平成27)に、18件が初めて認定された。

 「ストーリー」が地域の歴史的特徴・特色を示す興味深さ・斬新(ざんしん)さなどを有し、日本の魅力を十分に伝える内容になっていること、地域づくりの将来像とその実現に向けた具体的な方策が示されていること、日本遺産を通じた地域活性化の推進が可能となる体制が整備されていることが認定の基準とされている。認定されると多言語によるホームページの作成やガイド育成などの事業費が国から補助される。なお「ストーリー」には単一の市町村内で完結する「地域型」と、複数の市町村にまたがって展開する「シリアル型(ネットワーク型)」がある。

 「物語性」を重視したため、地域に受け継がれている有形無形のあらゆる文化財が対象となったことや、地方指定あるいは未指定の文化財も含めることができるなど、日本のこれまでの文化財の考え方を大きく広げるものとなっている。個々の遺産を「点」として指定・保存する従来の文化財行政のあり方から、点在する遺産を「面」として活用・発信するあり方にシフトしたものといえる。また、文化の保護よりは、地域の活性化と、海外に向けた魅力発信といったことが目的とされている点も、これまでの文化財行政から大きく舵(かじ)をきった点である。

 日本遺産に認定されることが国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産へのステップになるわけではないが、第1回認定の18件のなかには、水戸市の「弘道館(こうどうかん)」や栃木県足利(あしかが)市の「足利学校」などを含む「近世日本の教育遺産群―学ぶ心・礼節の本源―」や「四国遍路(へんろ)~回遊型巡礼路と独自の巡礼文化~」など、2007年に文化庁が世界遺産の候補物件を各自治体から公募した際に見送りとなったものの、その後も世界遺産登録を目ざしている物件が一定数含まれており、世界遺産の補完的な意味合い、あるいは「予備軍」としての位置づけもかいまみえる。

[佐滝剛弘 2018年9月19日]

 その後、2016年度に19件、2017年度に17件、2018年度に13件、2019年度(令和1)に16件、2020年度に21件が認定され、6年間で104件が認定された。2020年度を最後に新規認定は終了したが、日本遺産を活用した継続的な取組みを推進するため、認定地域には、認定後3年間は財政支援などが行われることとなった。

[編集部 2023年7月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日本遺産」の意味・わかりやすい解説

日本遺産
にほんいさん
Japan Heritage

地域の歴史的魅力や特色を通じ,日本の文化および伝統を語る「ストーリー」を認定する文化庁による事業。日本遺産として国内のみならず海外にも戦略的に発信することで,地域の活性化をはかることを目的とする。個々の遺産を「点」として指定・保存してきた従来の文化財行政とは異なり,点在する地域の遺産である有形・無形の文化財を「面」として活用し発信することによる地域のブランド化の促進をねらいとする。認定するストーリーには,単一の市町村内で完結する地域型と,複数の市町村にまたがって展開するシリアル型(ネットワーク型)がある。認定されると,文化芸術振興費補助金の交付による情報発信,人材育成,普及啓発,公開活用のための整備などに対する支援が受けられる。2015年,「加賀前田家ゆかりの町民文化が花咲くまち高岡―人,技,心―(富山県高岡市。→金沢藩)」,「近世日本の教育遺産群―学ぶ心・礼節の本源―(茨城県水戸市,栃木県足利市,岡山県備前市,大分県日田市。→弘道館足利学校閑谷学校咸宜園)」,「日本茶800年の歴史散歩(京都府宇治市城陽市八幡市京田辺市木津川市宇治田原町和束町南山城村。→宇治茶)」など計 18件のストーリーが初めて認定された。年に 1回公募する。(→文化財

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知恵蔵mini 「日本遺産」の解説

日本遺産

地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーを認定し、国内外への魅力発信や地域活性化を図る日本の事業。タイプとしては、単一の市町村内でストーリーが完結する「地域型」と、複数の市町村にストーリーが展開する「ネットワーク型」の二つがある。文化庁は2015年4月24日、40都府県から寄せられた83件の提案から、「近世日本の教育遺産群」(茨木・栃木・岡山・大分の4県)や「日本茶800年の歴史散歩」(京都府)、「琵琶湖とその水辺景観」(滋賀県)など、24府県の18件を第1回の日本遺産に選定したことを発表した。文化庁では、2020年までに日本遺産を100件程度にまで増やす予定としている。

(2015-4-28)

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