日本捕虜志(読み)にほんほりょし

改訂新版 世界大百科事典 「日本捕虜志」の意味・わかりやすい解説

日本捕虜志 (にほんほりょし)

長谷川伸史伝。1949-50年に《大衆文芸》に連載,55年私家版として刊行。日本人がどのように捕虜を遇してきたかを,丹念な資料調査を踏まえ,挿話や物語として再現したもの。663年(天智2)の白村江(はくそんこう)の戦から説き起こし,とくに日清・日露両戦役での捕虜問題に多くの筆を割き,捕虜に対する敬意,思いやり,人情などを描いて当時の日本人の美質を明らかにした。発表時,戦勝国の一方的な軍事裁判への抗議と,敗れた日本人へ自覚をうながすものと受け取られた。しかし実際の執筆は戦時中に始まっており,勝敗を超えたところで,日本人の民族性や人間性を見きわめようとした点に,作者真意はあったとみるべきであろう。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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