新語
しんご
新しくつくられたり、外国語から新たに取り入れられたりした語で、社会的習慣として確立したもの。そのときどきの人々の関心・興味などに適合して、爆発的に使用される新語は、とくに流行語とよばれるが、その多くは定着することなく忘れ去られてしまう。新語が生ずる理由としては、大きく三つの場合が考えられる。
(1)社会的理由 新しい事物・概念が生じて、それを表す語が新たに必要となった場合(コンピュータ、水爆、新幹線、公害など)。
(2)心理的理由 感じのよい語形に変えたり、新しいイメージを生み出そうとして語形を変えたり、不吉なことや不潔なことを連想させないような語形にしたりする場合(床屋→理髪店→バーバー、寝巻→パジャマ、便所→トイレ、閉会→お開き、すり鉢→当たり鉢など)。
(3)言語的理由 誤読が一般化したり、漢字制限などで新しい語形が決定されたりした場合(一所懸命→一生懸命、独擅場(どくせんじょう)→独壇場(どくだんじょう)、涜職(とくしょく)→汚職、輿論(よろん)→世論など)。
新語をつくるには、既存の体系にまったく依存せずにつくる場合と、既存の語彙(ごい)体系に基づいてつくる場合とがあるが、前者の場合はまれで、ピンポンのように音象徴によるのがほとんどである。後者には、外国語から借用したもの(コンサート、ゴルフなど)、古語や廃語を再生したもの(経済、常識など)、既存の語を結び付けたり変化させたりしたもの(あんパン、カツ丼(どん)、ナイター、バイトなど)などがある。幕末・明治初期には膨大な漢語が新造されたが、そのほとんどは旧来の漢語の体系に基づくものである。それらのなかには「広告、金額、熱望、哲学」など今日でもよく用いられるものも多い。この大量の新漢語の造出によって、日本語の語彙体系は大きく変わり、和語より漢語のほうが多くなった。
[鈴木英夫]
『加茂正一著『新語の考察』(1944・三省堂)』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
新語
しんご
neologism
新造語ともいう。新しくつくられ,用いられるようになった単語。広く考えれば,従来用いられていた単語で新しい意味を付加されたものも含めることができる (水槽の意の tankが第1次世界大戦のときにつくられはじめた戦車をさすのに用いられたなど) 。新語は,それまではなかった物や新しく問題になった概念を表現するためにつくられるほか,同じ事物を新鮮に (アパートをマンション) ,または婉曲に表現するためにつくられたり,同音異義語を区別するためにつくられたり (私立〈わたくしりつ〉,市立〈いちりつ〉) する。まったく新しい語を創造することはまれで,多くは合成,省略などの形成法で既成の語からつくったり,外国語や方言から借用したりする。 (→借用語 )
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
しん‐ご【新語】
[1] 〘名〙 新しくつくられたり、使われだしたりしたことば。新
造語。
※棒三昧(1895)〈
正岡子規〉「成る程理想といふ語は古来我国に無き者なれば余程重宝なる新語として使用せらるるは尤なれども」
[2] 中国、
前漢の
陸賈(りくか)の
著書。二巻一二編。正統的な
儒家の書で、
孔子の言葉を多く引き、
王道を尊び、身を修めることを説いたもの。陸賈新語。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「新語」の意味・読み・例文・類語
しん‐ご【新語】
新しくつくられた、また、使われだした言葉。新造語。「新語を辞書に収録する」
[補説]書名別項。→新語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
しんご【新語】
新しく用いられるようになった単語。流行語は多く新語であるが,必ずしも新語とは限らない。新語は語彙(ごい)体系のなかにまだ完全には納まっていない単語で,そのため人によって理解の程度がひどく違い,ときにコミュニケーションをさまたげる。新語はもっぱら名詞であり,しかも普通名詞に限られる。新しい外来語はすべて新語である。在来語の体系内に入り込めば新語でなくなる。外来語も古くなれば新語でなくなる。〈ビール〉は現代では新語ではないが,18世紀にオランダ語bierから借用したときは新語であった。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報