新編武蔵風土記稿(読み)しんぺんむさしふどきこう

日本歴史地名大系 「新編武蔵風土記稿」の解説

新編武蔵風土記稿(風土記稿)
しんぺんむさしふどきこう

二六五巻付録一巻

別称 新編武蔵国風土記稿 地誌編修取調所編

成立 文政一一年

写本 国立公文書館内閣文庫・国会図書館東京大学史料編纂所ほか

解説 幕府が「大明一統志」を目標に儒学的規範としての国誌編纂を目指したが、いまだ可能ではないので他日の国誌編纂に役立つよう材料を集めておくことで終わり、新編某国風土記という書名が付されることになった。内容は郡別郷村別に配列、郷村ごとの記述主体で、沿革・支配関係・概況・小名・社寺旧跡・旧家などを記述し、ほかに古文書・金石文を収録、併せて社寺名勝の風景や古器物の図などを入れている。なお土性・田畑の多少・集落形態等の記述は調査担当者の姿勢によってか省略されている郡もある。明治一七年内務省地理局から国立公文書館内閣文庫本(和装、八〇冊もしくは八一冊)が刊行され、その縮尺影印本が昭和四四年八冊本で刊行された。同五六年には一部が「新編武蔵風土記稿埼玉編」の書名で復刻された。別に史料編纂所本が大日本地誌大系七―一八収められる。

新編武蔵風土記稿(風土記稿)
しんぺんむさしふどきこう

二六五巻・付録一巻

別称 新編武蔵国風土記稿 間宮庄五郎士信他四一名編

写本 国立公文書館内閣文庫(浄書稿本)・国立国会図書館・東京大学史料編纂所・東京都公文書館・天理大学附属天理図書館・無窮会平沼文庫

解説 文化七年起稿、文政一一年成立、天保元年幕府に上呈。徳川幕府が編纂した武蔵国の地誌。もともとは「新編武蔵風土記」の編纂をすべく、大学頭林述斎総裁とし、昌平坂学問所に編纂局を置いて編纂事業を開始したが完成せず、稿本である本書の完成にとどまった。編者が実際に村々を回って歴史的経緯や寺社・名所旧跡・旧家など町村の概要を調査し、挿図も多く収められており、化政期の武蔵国の各町村の事情を知るための貴重な史料である。

活字本 大日本地誌大系七―一八(内務省地理局版、雄山閣)、平成七年―(浄書校本影印本)

新編武蔵風土記稿(風土記稿)
しんぺんむさしふどきこう

二六五巻付録一巻

別称 新編武蔵国風土記稿 林述斎編

成立 文政一一年

写本 国立公文書館・国会図書館・東京大学史料編纂所など

解説 江戸幕府官撰。郡別村ごとの編集で、近世とくに後期の村況を知る基本史料。

活字本 大日本地誌大系一三

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「新編武蔵風土記稿」の意味・わかりやすい解説

新編武蔵風土記稿 (しんぺんむさしふどきこう)

1828年(文政11)成立。昌平黌地理局総裁林述斎編。全265巻。武蔵国の総国図説から建置沿革,山川,名所,産物,芸文と各郡村里に分かれている。文書や記録も収録され,村の地勢,領主,小名,寺社,山川や物産等の記述は詳細で正確である。幕府官撰の地誌として武蔵国研究にとって重要な史料。《大日本地誌大系》所収。
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百科事典マイペディア 「新編武蔵風土記稿」の意味・わかりやすい解説

新編武蔵風土記稿【しんぺんむさしふどきこう】

江戸幕府官撰の地誌。265巻・付録1巻。昌平(しょうへい)坂学問所地理局総裁の林述斎(はやしじゅっさい)編で,1828年の成立。内容は郡別郷村別に配列,郷村ごとの記述を主として沿革・支配関係・概況・小名・社寺旧跡・旧家などを記す。古文書や金石文も収め,あわせて社寺名勝の風景や古器物の図などが入れられている。武蔵国研究の基本史料。《大日本地誌大系》所収。
→関連項目武蔵野新田

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「新編武蔵風土記稿」の解説

新編武蔵風土記稿
しんぺんむさしふどきこう

江戸後期に幕府によって編纂された武蔵国一国の地誌。265巻。1810年(文化7)編纂作業着手,28年(文政11)稿本完成,30年(天保元)献上本完成。作業は江戸湯島昌平黌(しょうへいこう)内にあった地誌調所で行われ,林述斎を総裁として,間宮士信・三島政行ら多数が編纂にたずさわった。1803年(享和3)から開始された幕府地誌編纂事業により作られた。「大日本地誌大系」所収。

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世界大百科事典(旧版)内の新編武蔵風土記稿の言及

【武蔵国】より

…この対象となった主要な地は武蔵野である。19世紀前半に成立した《新編武蔵風土記稿》は〈玉川次左衛門某,野村次郎右衛門某等武蔵野開墾の功を起し,寛文九年(1669)閏十月二十七日検地しおわる。南原野,廻北原,地蔵野,小川新田,砂川新田,下石原新田,松野五箇所,すべて高十八万石ばかり,一所にて広なるもの一区,地蔵野分一区,其余は飛地にて所々に区別せり〉と,この時期の武蔵野の開発を説明し,武蔵国の正保(《武蔵田園簿》)と元禄(元禄郷帳)の石高を比較して60年間に18万5000石が増加したとしている。…

※「新編武蔵風土記稿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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