新疆(読み)しんきょう

精選版 日本国語大辞典 「新疆」の意味・読み・例文・類語

しんきょう シンキャウ【新疆】

中国の北西部を占める新疆ウイグル自治区の旧称。清の乾隆時代中国領となり、一八八四年省が置かれた。中華民国時代には東トルキスタン共和国をたて独立の気運が興ったが、一九五〇年中華人民共和国に吸収され、五五年ウイグル族自治区となった。

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百科事典マイペディア 「新疆」の意味・わかりやすい解説

新疆【しんきょう】

現在の中国北西部,ジュンガリア盆地天山北路)とタリム盆地(天山南路)を含む地方。東トルキスタンとも。すでに前6世紀にはタリム盆地には多くのオアシス国家があり,北方には匈奴などがいたが,前2世紀後半,漢の武帝による張騫(ちょうけん)の派遣を機に,この西域は中国と西方を結ぶ接点となった。明代にはオイラート部,カシュガル・ハーン国などが分立していたが,清代初期に北路のジュンガル部,南路の回部が勢力を持つようになった。乾隆帝(在位1735年―1795年)の時代にすべて清に帰服したため,1884年新疆省(新疆は〈新しい土地〉の意)が新設された。その間,ジュンガリアのイリ川流域は一時ロシア領となり(〈イリ条約〉参照),またイスラム教徒ドゥンガン反乱もあった。中華民国時代の1933年にカシュガルでトルコ系ムスリムによって〈東トルキスタン・イスラム共和国〉が樹立されたが翌年崩壊し,また1944年には伊寧を中心にウイグル,カザフ両民族が〈東トルキスタン共和国〉を樹立した(〈三区革命〉とも呼ぶ)が,1949年中華人民共和国の成立に伴って解散し,1955年現在の新疆ウイグル自治区が発足した。中国は新疆生産建設兵団という準軍事的政府組織を展開し,経済・軍事開発をはじめ行政司法の全般を担わせた。それにともない漢族の大量の流入が相次ぎ,漢族との格差問題なども加わり,ウイグル族を中心に分離独立を求める動きが活発化することになった。分離独立を主張する人々は,新疆という呼称を嫌い〈東トルキスタン〉という呼称を用いている。近年,〈東トルキスタンイスラム運動〉の影響力が拡大しているとも言われるが,中国政府は徹底的な統制弾圧をもって臨んでおり,詳細は不明である。
→関連項目天山山脈ヤークーブ・ベク

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「新疆」の解説

新疆(しんきょう)
Xinjiang

古くは中国から西域と呼ばれた地域の主要部分。東トルキスタンとほぼ領域が重なる。現在,トルコ系ムスリムのウイグル人を最多居住民族とする。1759年に清朝に征服されてその統治下に置かれたが,19世紀後半にトルコ系ムスリムの大反乱が発生し,ヤークーブ・ベグ政権が成立した。反乱鎮圧後の1884年に省制が施行され,公式に新疆と呼称されるようになった。辛亥(しんがい)革命後は,楊増新(ようぞうしん)金樹仁(きんじゅじん)盛世才(せいせいさい)という漢人支配者のもとで独立的に維持された。1933年に東トルキスタン・イスラーム共和国,44年に東トルキスタン共和国と,トルコ系民族の民族運動による国家が樹立されたが,49年に中華人民共和国に統合された。55年に新疆ウイグル自治区が成立。

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旺文社世界史事典 三訂版 「新疆」の解説

新疆
しんきょう
Xīnjiāng

中国の最北西部,現在の新疆 (シンチヤン) ウイグル自治区
天山 (テンシヤン) 山脈をはさんでジュンガル盆地(天山北路・準部)とタリム盆地(天山南路・回部)を含む東トルキスタン地域。清の乾隆 (けんりゆう) 帝が平定し,新しい土地の意味で新疆と名づけた。漢代以来,西域 (さいいき) と呼ばれ,東西交通の要衝で絹の道(シルク−ロード)が貫通し,アーリア系民族が住んでいたが,9世紀以来,トルコ系が多くなった。漢以来,中国と北方民族の争奪の的となった。19世紀後半に左宗棠 (さそうとう) がイスラーム教徒の反乱を平定して新疆省を置き,中華人民共和国では1955年新疆ウイグル自治区となった。中心はウルムチ。

新疆
シンチャン

しんきょう

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新疆」の意味・わかりやすい解説

新疆
しんきょう
Xin-jiang; Hsin-chiang

中国北西部のジュンガル (準 噶爾) 盆地を含む地方の呼称。清の乾隆帝時代に準,回 (中央アジアのモンゴルとウイグル) 両部を平定したのち,この地方を「新たに加わった領域」の意味で新疆と名づけた。清代の藩部の一つ。清末のイスラム教徒の反乱を左宗棠が平定したのを機に光緒 10 (1884) 年省制を施行。民国になって第2次世界大戦中の 1944年にウイグル族やカザフ族を中心に東トルキスタン共和国が樹立されたが,50年中華人民共和国に加わり,55年新疆ウイグル自治区となった。

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世界大百科事典(旧版)内の新疆の言及

【西域】より

…日本では,前者の用法をやや拡大して,東・西トルキスタンないし中央アジアの意味で用いられる場合が多い。中国では,1884年(光緒10)の新疆省の成立以後,東トルキスタンを従来の〈西域〉と並んで〈新疆〉と呼ぶ場合が多い。 歴代の中国王朝にとって西域はまず第1に匈奴に始まる北方遊牧民の活動を牽制するための軍略上の要地であった。…

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