新古今調(読み)しんこきんちょう

精選版 日本国語大辞典 「新古今調」の意味・読み・例文・類語

しんこきん‐ちょう ‥テウ【新古今調】

〘名〙 歌論で、「新古今和歌集」の特徴的な歌のよみぶりや調べをいう。万葉調古今調に対して、非現実的・夢幻的な象徴美の世界をかたちづくっている。余情にとむ妖艷(ようえん)な詠風で、三句切れ、本歌取り、縁語、掛詞、体言止めなどの修辞技巧、情趣的・感覚的な表現、唯美的・ロマン的な思潮などがその特色である。

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デジタル大辞泉 「新古今調」の意味・読み・例文・類語

しんこきん‐ちょう〔‐テウ〕【新古今調】

新古今和歌集にみられる特徴的な歌のよみぶりや歌の調子。一般的には、情調的な諸要素が複合した、絵画的、物語的、象徴的な歌風で、余情・妖艶ようえんを尊ぶ。格調は韻律的で、初句切れ三句切れ本歌取り体言止めが多い。

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百科事典マイペディア 「新古今調」の意味・わかりやすい解説

新古今調【しんこきんちょう】

新古今和歌集》の歌風。〈万葉調〉〈古今調〉とともに和歌史上の3大様式のひとつとされる。この勅撰集成立の13世紀初頭はなお動乱の中にあり,充実した生活感の消失の中で過去への憧憬(どうけい)を強める一方,時代の終末感に逃避的態度がゆきわたって,古典主義的傾向と否定的浪漫主義貴族の心を占めており,それらが新古今和歌集の歌風を貫いているとされる。おもな特徴は,生の感情,実感を表出するのではなく,古典を媒介にして,和歌の伝統が蓄積してきた詩情の世界に参加するという姿勢であり,そのために,情調の象徴的な表現,幽玄・余情の重視,本歌取りや体言止めの多用などが選択される。また初句切,三句切が多い。
→関連項目金槐和歌集

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新古今調」の意味・わかりやすい解説

新古今調
しんこきんちょう

新古今和歌集』の歌風を特徴づける調べ。具体的には,初句切れ,3句切れが多いこと,体言止めが多いことなどがあげられる。初句切れが多いことは,切迫した声調の歌が多いことを意味し,そこに乱世の響きがあるとする見方もある。3句切れが多いことから,上句と下句との間には断絶が生じやすく,また観念の飛躍が認められる場合が多い。このことから連歌的であるともいわれ,また「疎句」の歌が多いといわれる。たとえば,「思ふことなど問ふ人のなかるらん仰げば空に月ぞさやけき」 (慈円) などは『さゝめごと』で疎句の歌とされている。体言止めは言いさした表現なので,余情が生じる効果がある。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「新古今調」の解説

新古今調
しんこきんちょう

新古今的表現とも。万葉調・古今調と並んで和歌史に確立された3大表現様式の一つ。「新古今集」には「万葉集」以後当代の歌まで載せているが,新古今調は,「新古今集」成立時代の歌風をさす。日常の生な実情・実感を表出せず,古典を媒介として想像による詩情の世界を構築し,そのなかに自己の抒情を解放するような態度に特徴がある。本歌取・本説取などによる古典の美的世界の再構築を背景にして,複合・錯綜した情調美を醸しだし,幻想的・絵画的歌境をうむような創作方法だった。形式的には初句切れ・三句切れ・体言止めの多用が特徴で,複雑微妙な情調を象徴的に表現するのに効果がある。

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