精選版 日本国語大辞典 「斎・祝」の意味・読み・例文・類語
いわ・う いはふ【斎・祝】
〘他ワ五(ハ四)〙
[一] (斎)
① けがれをきよめ、忌みつつしんで、よいことを求める。後に残った者が、現状をかえたりせずに、精進を守って、外に出た者の安全を祈ることなど。
② 吉事をもとめて、神事をおこなう。呪言をとなえ、捧げ物をして、幸せを念ずる。
※万葉(8C後)八・一四五三「留まれる我は幣(ぬさ)引き斎(いはひ)つつ君をばやらむはや帰りませ」
③ 神がその力をもって、人の幸せを守る。
④ 神聖なものとして祭る。神としてあがめる。「いつく(斎)」と似た意味となる。
⑤ (④の意から) (貴い身分として)たいせつにする。かしずく。秘蔵する。
※曾我物語(南北朝頃)一「今は、うたがふところなく、程嬰に心おゆるし、一の大臣にいわいたもふ」
① 将来の幸運をいのる。また、縁起のよい事をいう。
② めでたい物事について、よろこびの気持を、改まった言葉や動作で表わす。
※徒然草(1331頃)一七五「逃げんとするを、とらへてひきとどめて、すずろに飲ませつれば〈略〉前後もしらず倒れふす。いはふべき日などは浅ましかりぬべし」
③ (祝福をするために贈り物をする意から) 物を贈る。祝儀の金銭を与える。
※浄瑠璃・大経師昔暦(1715)下「さらばまちっと祝(イハ)はふと銭ざし抜いて五六十」
[語誌](1)原義は潔斎して呪術を行なう意。万葉集では斎、忌の字をあてる。(一)①の挙例「万葉‐二九七五」は、忌みつつしんで相手の無事や再会を祈願するという例。神に向かって祈る場合も、神官が神社や神木を祭るのも同様の意味をもつ。→「いむ(忌)」の語誌。
(2)類義語イツクは祭り仕える意。ただ「祝部(はふり)らが斎(いは)ふ社」〔万葉‐二三〇九〕とも、「住吉(すみのえ)に伊都久(イツク)祝(はふり)」〔万葉‐四二四三〕ともいうので、イハフとイツクは崇め祭るという点で重なる部分がある。また「木綿(ゆふ)かけて祭る三諸(みもろ)の神」〔万葉‐一三七七〕と「木綿かけて斎(いは)ふこの神社(もり)」〔万葉‐一三七八〕の例を見ると、マツルとも重なるようであるが、マツルは神への奉仕の意味が大きい。
(3)イハフは平安時代以後大切に守る意から祝福の意が生じ、後世もっぱらこの意で用いられるようになる。
(2)類義語イツクは祭り仕える意。ただ「祝部(はふり)らが斎(いは)ふ社」〔万葉‐二三〇九〕とも、「住吉(すみのえ)に伊都久(イツク)祝(はふり)」〔万葉‐四二四三〕ともいうので、イハフとイツクは崇め祭るという点で重なる部分がある。また「木綿(ゆふ)かけて祭る三諸(みもろ)の神」〔万葉‐一三七七〕と「木綿かけて斎(いは)ふこの神社(もり)」〔万葉‐一三七八〕の例を見ると、マツルとも重なるようであるが、マツルは神への奉仕の意味が大きい。
(3)イハフは平安時代以後大切に守る意から祝福の意が生じ、後世もっぱらこの意で用いられるようになる。
いわい いはひ【斎・祝】
〘名〙 (動詞「いわう(斎)」の連用形の名詞化)
[一] (斎)
① けがれを忌み、心身を清浄にして神をまつること。
※書紀(720)神代下(水戸本訓)「是の時に、斎主(いはひ)の神を斎(イハヒ)の大人(うし)と号(まう)す〈斎主、此をば伊幡毗(イハヒ)と云ふ〉」
② 神をまつる場所。また、その人。いわいの宮。いわいぬし。いわいびと。
※書紀(720)雄略元年三月(前田本訓)「是の皇女、伊勢の大(おほむ)神の祠(イハヒ)に侍り」
③ 大切にかしずき育てること。
[二] (祝)
① 祝うこと。祝賀。祝賀の行事。
※源氏(1001‐14頃)葵「たしかに、御枕がみに参らすべきいはひの物に侍る」
② 祝って贈る品物。ひきでもの。祝儀。また、祝って述べることば。
※御伽草子・美人くらべ(室町時代物語集所収)(室町中)「よきやうに御申し候はば、いはひを申すべしと申されければ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報