文章軌範(読み)ぶんしょうきはん(英語表記)Wén zhāng guǐ fàn

精選版 日本国語大辞典 「文章軌範」の意味・読み・例文・類語

ぶんしょうきはん ブンシャウ‥【文章軌範】

中国の総集。七巻。南宋謝枋得撰。科挙受験者が模範とすべき唐宋の名文中心に選び、圏点評注を加えたもの。韓愈(かんゆ)柳宗元欧陽脩蘇洵蘇軾・蘇轍らの文章六九編を放胆文小心文に分類して集録日本には室町末期に伝来

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デジタル大辞泉 「文章軌範」の意味・読み・例文・類語

ぶんしょうきはん〔ブンシヤウキハン〕【文章軌範】

中国の文章集。7巻。宋の謝枋得しゃぼうとく撰。科挙の受験者のために、模範とすべき文章の傑作を編集したもので、韓愈柳宗元欧陽脩蘇軾など唐宋の作家の文を中心に69編を集めたもの。日本にも室町末期に伝来し、江戸時代に広く読まれた。

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改訂新版 世界大百科事典 「文章軌範」の意味・わかりやすい解説

文章軌範 (ぶんしょうきはん)
Wén zhāng guǐ fàn

中国で,科挙受験者のため編集された模範文集。7巻。軌範とは手本・法則の意味。宋末の忠臣謝枋得(しやほうとく)の編。蜀漢諸葛亮(しよかつりよう)の《出師表(すいしひよう)》と晋の陶潜(淵明)の《帰去来兮辞(ききよらいのじ)》以外はすべて唐・宋人の文章から成り,韓愈31編,柳宗元5編,蘇軾(そしよく)12編,欧陽修5編,蘇洵4編などが多いほうである。全体を放胆文(1,2巻)と小心文(3巻以下)とに大別する。前者は字句や文法にこだわらずに思うがままに表現した作品を,後者は細心の注意をはらってすじめ正しく書かれたものを収めると称するが,もちろん一見そのように見えるだけで,作者は文章の構成と細部そしてリズムを十分に把握して最高の表現に到達しているのである。元・明以降流行したが,清代にはほとんど顧みられなかった。一方,日本へは室町時代の末に伝来し,江戸時代にはひろく普及した。頼山陽に《謝選拾遺》6巻の補選および《評本文章軌範》7巻がある。そのほか海保漁村の《補注文章軌範》など多くの注釈書が刊行された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「文章軌範」の意味・わかりやすい解説

文章軌範
ぶんしょうきはん

中国、宋(そう)代の散文選集。七巻。謝枋得(しゃぼうとく)編。唐宋の古文を中心に文章の模範となる作品69編を選んだもの。選ばれた作品は、15作家のうち唐の韓愈(かんゆ)が32編ともっとも多く、ついで宋の蘇軾(そしょく)の12編、唐の柳宗元(りゅうそうげん)と宋の欧陽修(おうようしゅう)の各五編がこれに次いでいる。この書は、努力しだいで高位高官になれる意の「侯王将相有種乎(こうおうしょうしょうしゅあらんや)」の七字を、七巻に一字ずつあてて、侯字集・王字集などと命名しているように、官吏任用試験(科挙)の受験参考書としてつくられたものである。したがって、第一巻から順次に勉強すれば、しだいに高級な文章技術を会得できるように組み立てられている。科挙のないわが国では、江戸時代に作文の教科書あるいは文章の傑作集として広く読まれた。

[横山伊勢雄]

『『漢文大系18 文章軌範・古詩賞析』(1976・冨山房)』『前野直彬著『新釈漢文大系17・18 文章軌範 上下』(1961、62・明治書院)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「文章軌範」の意味・わかりやすい解説

文章軌範
ぶんしょうきはん
Wen-zhang gui-fan

中国の散文選集。南宋末の謝枋得 (しゃぼうとく) の編。7巻。科挙受験のための作文参考書として編まれた書で,模範とすべき古今の散文 69編を収める。諸葛亮 (しょかつりょう) の『前出師表』と陶潜の『帰去来辞』の2編のほかは,すべて韓愈,柳宗元,欧陽修,蘇軾 (そしょく) など唐,宋古文作家の文章が選ばれている。俗書ではあるが,選択が要を得ているのと,編者が宋に殉じた忠義の士であることから,元,明代に大いに流行し,王陽明が序を書いたほどであった。しかし清代以後はほとんど読まれなくなった。日本には室町時代に渡来し,江戸時代には江戸昌平坂学問所などから和刻本も多く出され,『古文真宝』をしのいで漢文の教科書として広く用いられた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「文章軌範」の解説

文章軌範
ぶんしょうきはん

南宋の謝枋得 (しやぼうとく) が編纂 (へんさん) した文章読本
7巻。科挙 (かきよ) の作文の際の受験参考書として作られ,韓愈 (かんゆ) ・柳宗元 (りゆうそうげん) ら唐・宋の名文家の文を中心に収めた。元〜明代に広く読まれ,日本でも江戸中期以後愛読された。

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