文王(読み)ぶんおう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「文王」の意味・わかりやすい解説

文王
ぶんおう

紀元前12~前11世紀ごろの人。中国古代の聖王。周の王、季歴(きれき)(王季)の子。武王の父。名は昌(しょう)。周は古公亶父(たんぽ)、季歴のころ陝西(せんせい)省岐山の付近から発展し、文王の時代には犬戎(けんじゅう)、密須(みっしゅ)、邘(う)、崇(すう)などの部族を征し、西伯(せいはく)とよばれるに至った。文王は陝西省西安付近に新都豊邑(ほうゆう)を営み、諸侯を従えて殷(いん)の紂王(ちゅうおう)を討とうとしたが、果たさなかったという。文王は徳をもって万民を治め、諸侯もこれを慕い、隣国の虞(ぐ)、芮(ぜい)の争いを止めたとか、あるいは紂王に羑里(ゆうり)に捕らわれたとき、諸侯みなこれに従ったなどの伝説がある。「詩」「書」や青銅器銘文にも文王、武王の創業の功をたたえるものが多い。

[宇都木章]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「文王」の意味・わかりやすい解説

文王
ぶんおう
Wen-wang; Wên-wang

中国,周王朝の基礎をつくった君主。前 11世紀頃在世。周王朝第1代の王,武王の父。姓は姫。名は昌。殷代末期,季歴の子として生れ,陝西地方で大いに徳を施したので,諸侯はこれに従ったという。周囲蛮族を滅ぼして,都を岐山から豊邑に定め,西伯と号した。虞,芮2国の争いを裁いてからは,ますます諸侯の信頼を得て,天下の3分の2を帰属させた。子の武王によっては滅びるが,その基礎を文王が築いた。後世儒家から理想的な聖天子と称され,その徳は『詩経』の詩に歌われている。

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百科事典マイペディア 「文王」の意味・わかりやすい解説

文王【ぶんおう】

中国,前12世紀ごろの君主。の王朝の基礎を作った。姓は姫(き),名は昌。賢者を敬い,太公望などの名臣を集め,周囲の諸族を征服し,陝西に力を振るった。(いん)の紂(ちゅう)王が東夷討伐に意を用いているすきに,黄河に沿って東進し,殷に大きな圧力をかけた。子の武王のとき,周王朝が始まる。

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精選版 日本国語大辞典 「文王」の意味・読み・例文・類語

ぶん‐おう ‥ワウ【文王】

紀元前一二世紀頃、中国周王朝を創建した王。姓名姫昌(きしょう)。号は西伯。殷の紂王の暴政下にあって、陝西地方で治績をあげ、やがて殷に代わる勢力となった。古代の理想的な聖人君主の典型とされる。生没年未詳。

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占い用語集 「文王」の解説

文王

易の三聖の一人で、紀元前十二世紀の周王朝の開祖六十四卦の卦辞を作ったといわれている。伝説として「伏羲が八卦を作り、周の文王が六十四卦の卦辞を作り、周公が爻辞を作り、孔子が十翼を作った」とされている。

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デジタル大辞泉 「文王」の意味・読み・例文・類語

ぶん‐おう〔‐ワウ〕【文王】

中国古代、いん末のの王。姓は姫、名は昌。武王の父。有能な人材を集め、徳治を心がけて、周王朝の基礎をつくった。後世、儒家から理想の君主とみなされる。生没年未詳。ぶんのう。

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旺文社世界史事典 三訂版 「文王」の解説

文王
ぶんおう

生没年不詳
前12世紀ごろ,周の天下統一の基礎をつくった君主
周王朝の創始者武王の父。西伯の称号を受け,徳によって民衆を教化し,後世の儒家から理想的な天子と説かれた。

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世界大百科事典 第2版 「文王」の意味・わかりやすい解説

ぶんおう【文王 Wén wáng】

中国,西周王朝の創始者。生没年不詳。名は姫昌(きしよう)。陝西盆地の周族は文王の時代,なお殷王朝の支配下にあったが,太顚(たいてん),閎夭(こうよう),散宜生(さんぎせい)らの賢臣の補佐もあって実力を蓄え,文王は中国西部の支配をまかされて西伯と呼ばれた。しかし周族の勢力の伸長は殷の紂王(ちゆうおう)の警戒心をよびおこし,文王は羑里(ゆうり)にとらわれることになる。この捕囚の間に文王は《易》の六十四卦を整備したという。

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世界大百科事典内の文王の言及

【周】より

…子の王季は殷第28代の文丁から西の方伯(西方の実力者)と認められたが,のち文丁に殺されたと伝えられる。 次の文王のとき,しだいに力を東に伸ばし,河南西部までその影響下に収め,都を周原から鄷(ほう)(西安市西)にうつし,王朝の基礎を築く。子の武王は都をさらに東の鎬(こう)(西安市西郊)にうつすとともに,東進に努め,前1050年ころ殷を滅ぼして王朝を建てた。…

【乳房】より

…松浦静山《甲子夜話》に上下2対の乳房をもつ男女の話がある。《五雑俎》によれば,周の文王も四つの乳の持主だった。中世のヨーロッパでは副乳はまごうかたなき魔女の特徴とされた。…

※「文王」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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