文・紋・綾・絢(読み)あや

精選版 日本国語大辞典 「文・紋・綾・絢」の意味・読み・例文・類語

あや【文・紋・綾・絢】

[1] 〘名〙
[一] (文・紋・綾)
① ななめに線が交錯している綾織りの模様。斜線模様。また、一般に物の面に現われたさまざまな形、模様をいう。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※後撰(951‐953頃)春上・一一「水の面(おも)あや吹き乱る春風や池の氷を今日はとくらむ〈紀友則〉」
② (模様や色彩の美しさから) いろどり。美しさ。見事さ。おもむき。
※読本・昔話稲妻表紙(1806)三「頭(かしら)に似合ぬ振袖の、綾(アヤ)の小袖の模様さへ」
金色夜叉(1897‐98)〈尾崎紅葉〉前「彼の整へる面(おもて)は如何なる麗はしき織物よりも文章(アヤ)ありて」
③ 物事の筋目。条理。理屈。理由。→あやない
※平中(965頃)二七「あなさがな。などて寝られざらむ。もし、あややある」
④ 文章や言葉のかざり。修辞。いいまわし。表現の仕方。
※俳諧・三冊子(1702)白双紙「ことば書、その書やう、和にならひなし。漢には其綾(あや)も有事となり」
⑤ 音楽の曲節。ふしまわし。節奏。
※俳諧・鷹筑波(1638)二「声のあやあくめもなひぞねり雲雀(ひばり)良徳〉」
⑥ 木や草のかたい筋。葉脈木目
※石山寺本法華経玄賛平安中期点(950頃)六「薪を折るに、其の木の理(アヤ)に随ふときには、柁に作れり」
⑦ よごれ。汚点。しみ。→あや(文)が抜ける
※評判記・野郎大仏師(1667‐68)松本小太夫「座はいちとぜひなひきざし也お手におぼえずせっしゃうをするあや有」
両者の間に立って連絡をとる人。仲介人。仲裁人。とりもち役。
日葡辞書(1603‐04)「Ayani(アヤニ) ナル〈訳〉和合させるために、不和になっている人たちの間で仲裁人となる」
⑨ 長期にみた相場の動きの中での特別な理由のない小さな変動。「あや押し」「あや戻し」
[二] (綾・絢)
① 綾模様を織り出した絹。綾織りの絹地。
万葉(8C後)九・一八〇七「錦(にしき)(あや)の 中につつめる 斎(いは)ひ児も 妹にしかめや」
② 「あやとり(綾取)」の略。
※雑俳・柳多留‐三二(1805)「遣り手が綾いく度取っても猫俣」
③ 「あやだけ(綾竹)」の略。
④ 「あやおり(綾織)④」の略。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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