整理学(読み)せいりがく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「整理学」の意味・わかりやすい解説

整理学
せいりがく

整理に関する研究・くふうというほどの意味で、学とよぶ独立した体系があるわけではない。整理学ということばは、加藤秀俊(ひでとし)(1930― )著『整理学』(1963・中公新書)が初出である。出版当時は高度経済成長期であり、同時に技術革新が進行していた。技術革新はプラスチックなど新しい素材や製品を生み出し、社会生活でも家庭生活でも経験したことのなかった豊富な財が氾濫(はんらん)し、「整理」が必要とされた時代であった。そこに整理学という分野を受け入れる素地があった。「乱れたものを整える、不用のものを除く」ことが狭義の整理(整理作業)であり、そのような作業の結果、どこに何があるかがだれにもわかり、利用しやすい状態に整頓(せいとん)されることが広義の整理である。整理・整頓が適切になされることにより、能率のよい生活が確保される。

[佐藤順子]

家庭における「物」の整理

家庭の生活用品は種々雑多であり、家族の年齢や家庭経済などの変動により必要度、使用頻度は変化する。そのため、財の用・不用が生じ、つねにこれらの整理を含む管理が課題となる。生活財は導入後、一定期間使用され、廃棄、リサイクルなどの方法で処分される。いったん生活に取り入れた財の処分は、処理費も必要になる。資源の有効利用のためにも生活財は質・量を適切に選ぶ能力が求められる。ここに極力物をもたない立場にたつ生活の仕方もみられるようになった。

 また整理は収納スペースの問題でもある。用途、使用場所、素材、機構そのほか、諸条件を考え合わせて収納場所を選ぶことが重要である。また家庭のだれにでも収納された場所がわかり、出し入れ労力が少なく、取り出したらすぐ使える状態に保つのが望ましい。つまり整理と収納は、一体となっていなければ無意味なのである。

[佐藤順子]

家庭における情報の整理

IT(情報技術)の進歩により飛躍的に増えた情報の管理という新たな「整理」の問題にも直面している。ここでは家庭における情報の整理について考えてみたい(オフィス、その他一般の情報管理については「情報科学」「情報管理」などの項目を参照)。

 管理すべき情報は、対人・社会関係、財産関係、学校関係、消費生活関連の記録、機器類の取扱い説明書、図書や日記など多岐にわたる。それら分野別・関係先別の整理方法とともに、パソコンを活用するときの留意点についても述べる。

(1)住所録など 多くは専用市販ノートが使われる。カードを使い五十音分類など目的に適した方法で分類・保管するやり方もある。ノート方式は保管しやすく、カード式は加除しやすい。パソコンや携帯電話を利用することが多くなったが、その利点は、カード式と同じく加除しやすいこと。ただし、家庭で日常使用する場合は、使用頻度の高いものだけを電話帳、住所録などに転記したほうが便利である。かならず控えをとり、万一の誤操作に備えること。なおこれは、他の重要データ管理にも共通の留意点である。

(2)預金通帳、証券など 金融機関名、契約期間と金額、通帳番号、使用印鑑とその保管場所などを明記し、家族はそれらのあり場所がわかっていること。耐火金庫などに保管するのが望ましい。財産関係の記録をパソコンに保存した場合、家族等に情報公開する目的は果たせるが、反面だれにでも見られる危険もある。これを避けたいときはUSBメモリーなどの外部メモリーに保管し(保全のため印刷後)、パソコンのデータを消去するなど、記録の管理をくふうする。なおこれらの記録は、財産管理の一環として半年に一度見直し、つねに正確な記録とすること。

(3)子供の学校関係 行事予定や各種の連絡事項、PTA連絡網などは重要書類に相当するから保管場所を決め、つねに新しい情報だけを保存する。子供ごとに管理するのがよい。

(4)機器類の取扱い説明書 取扱い説明書も商品の品質の一部である。取扱い方法や管理、修理の情報なども含むので、その機器を廃棄するまで保存する。各種機器の取扱い説明書は一括して保管するとよい。

(5)家計簿および消費生活関連 通常は1年で廃棄してよいが、所得税の申告で必要経費の証明に使用した場合は、納税後も保存するのが望ましい。申告用紙控えといっしょに保管する。パソコン利用には、市販の家計簿ソフトがあるが、自分で使いよいものをくふうしてもよい。集計が簡単なことが大きな利点である。家計簿の目的は、生活設計に役だてることだから、過去の年間集計は記録として保管しておきたい。

(6)その他 図書、雑誌は増え続けるが、雑誌は一定の保存後廃棄し、必要なときは図書館を利用する。日記、写真などは個人の必要に応じて保存する。写真などは当事者以外には意味がないとして、家族全体で管理するのではなく個人で整理する傾向にある。

[佐藤順子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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