(読み)コウ

デジタル大辞泉 「敲」の意味・読み・例文・類語

こう【敲】[漢字項目]

[音]コウカウ)(漢) [訓]たたく
指先こぶしで軽くたたく。ノックする。「推敲

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改訂新版 世界大百科事典 「敲」の意味・わかりやすい解説

敲 (たたき)

江戸幕府刑罰一種箒尻(ほうきじり)(竹片2本を麻苧(まお)で包み,その上にこよりを巻いた長さ58cmほどのもの)で罪囚の肩,背,臀(しり)を打つ身体刑(肉刑)。打つ回数によって五十敲(敲,軽敲(かるきたたき))と百敲(重敲)の別があった。庶民男子にのみ科し,武士・僧侶には適用せず,女子については過怠牢(かたいろう)の刑に換えた。単独で軽い盗犯や博奕ばくち)犯などに科せられたほか,二重御仕置(にじゆうおしおき)(敲のうえ追放,敲のうえ所払(ところばらい),入墨のうえ敲)もあり,適用の頻度は高かった。牢屋敷の門前にむしろを敷いて,裸体の罪囚をうつぶせに押さえつけ,検使与力,徒目付(かちめつけ)など関係役人立会いのもと,牢屋同心が打役(うちやく)および数取(かずとり)を務めた。足腰が痛んでやっと帰ることのできる程度に,気絶させないようたたくが,老幼病者には手加減してやや軽く打った。終われば有宿の者は参観家主,町村役人らに引き取らせ,無宿はその場で放つか,人足寄場(にんそくよせば)などへ送った。1720年(享保5)将軍吉宗の刑法改革にともない始められた刑種で,明清律における笞(ち)刑,杖(じよう)刑の影響が指摘される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「敲」の意味・わかりやすい解説


たたき

江戸時代,庶人男性に科せられた刑罰の一つ。罪民を箒尻 (ほうきじり) で「敲」いて放免する刑。享保5 (1720) 年耳切 (みみきり) ,鼻そぎの刑に代えて設けられたもので,律の笞杖を復活したものというよりも,明,清律を模倣したものとみられる。『公事方御定書』には「敲」について,牢屋の門前において,検使役人をつかわして牢屋同心に罪人の肩より尻にかけ,背骨を除き,気絶しないように,「敲」かせ,その数は単なる敲 (軽敲) が 50,重敲は 100,また受刑者が町人であればその家主,名主を,在方であれば名主,組頭を呼んでこれを見せ,処刑後,身柄を引渡すが,無宿者の場合は門前払いにする,といった内容が規定されている。なお,これと入墨を併科することもあった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「敲」の解説


たたき

江戸幕府による刑罰の一種。1720年(享保5)に始まったとの記録がある。庶民の男子のみで,女子には科せられなかった。牢屋の門前で罪人を裸にして,肩から尻にかけて叩いて苦痛を与えるもの。軽敲は50回,重敲は100回,重敲の場合は入墨が付加されることが多い。箒尻(ほうきじり)という太い棒で打ち,打役は罪人の背骨を避け,気絶しないように打つこととされた。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【刑罰】より

…それ以外にも家内に謹慎させる戸〆(とじめ),非人の身分に編入する非人手下(ひにんてか),女性に対する剃髪(ていはつ),女性に対する労役刑である(やつこ)刑,〈新吉原町へ取らせ遣わす〉という隠売女(かくしばいじよ)を吉原に下付して奴女郎にする刑等があった。(2)は入墨刑,(たたき)刑によって構成されている。幕府ははじめ耳そぎ,鼻そぎの刑を用いたが,1720年(享保5)将軍吉宗が明律の刺字(しじ)(顔面への入墨),中国法系の笞杖(ちじよう)刑を参照して入墨,敲刑に代え,窃盗罪,博奕罪の刑とした。…

【牢屋】より

…永牢とは無期禁錮の刑で,死刑,遠島に相当するものが自訴した場合や,諸藩で遠島刑に用いるべき島がないときに,遠島に代わる刑として採用すべきものとされた刑罰であるが,費用がかさむうえ,受刑者が他の未決囚に悪影響を及ぼすため,あまり適用されなかった。過怠牢は,女性と無宿でない15歳未満の者に対して,(たたき)刑の代りに科した禁錮刑で,刑期は30日または50日であり,幼年者が牢で成人と雑居させられるのであるが,この適用例はかなりあった。なお牢屋では懲役刑は行われることがなく,したがって牢屋には懲役監としての性格はなかった。…

※「敲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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