散・別(読み)あかれ

精選版 日本国語大辞典 「散・別」の意味・読み・例文・類語

あかれ【散・別】

〘名〙 (動詞「あかる(散)」の連用形の名詞化)
① 別々になること。分岐
※土左(935頃)承平五年二月九日「わだのとまりのあかれのところといふところあり」
② 集まっていた人々が、分かれ散ること。散会一説に、退出することとも。
源氏(1001‐14頃)花宴弘徽殿の御あかれならんと見給へつる」
③ 別々になっている、あるグループ。分(ぶん)。流れ。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「かたがたの人だまひ、上の御方の五つ、女御殿の五つ、明石の御あかれの三つ」
④ 別れること。別れ。
浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)五「此別(アカ)れをかなしみ」
[補注]②の用例は、一説に③の意とする。

あか・る【散・別】

〘自ラ下二〙 (「あかつ」に対する自動詞で、集まっている複数のものが、いくつかに分かれてどこか別々の場所に分散するの意) 分散して方々へ向かう。ちりぢりになる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一〇「外にして諸の人散(アカレ)王子を覓るに、遍く求むれども」
※源氏(1001‐14頃)若菜下「内裏(うち)の御猫の、あまたひき連れたりけるはらからどもの、所々にあかれて、この宮にも参れるが」
[語誌]上代での確例は見られない。類義の語に「わかる(分)」(下二段)があり、両語とも複数のものが複数にわかれることを表わす点では共通するが、「あかる」は単に複数にわかれるだけでなく、わかれたもの(主に人、ほかに琴、猫など)が、どこかある場所に向かって行ったり、家に帰ったり、あるいは貰われていって散り散りになったりすること(移動・帰着)をも表わして使われる。それに対して、「わかる」は単なる別離・分化のみを表わし、特に移動・帰着の意味を持たず、その場所・方向を表わす格助詞「に」「へ」などを伴う例はまれである。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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