放射線源(読み)ホウシャセンゲン(英語表記)radiation source

デジタル大辞泉 「放射線源」の意味・読み・例文・類語

ほうしゃせん‐げん〔ハウシヤセン‐〕【放射線源】

放射線の発生源をいう。放射性同位体加速器原子炉など。線源

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「放射線源」の意味・わかりやすい解説

放射線源 (ほうしゃせんげん)
radiation source

照射など,ある目的をもって放射線を使うとき,その発生源を放射線源または単に線源という。線源は,放射性同位体(ラジオアイソトープ),加速器または放射線発生装置,および原子炉の3種類に分類することができる。

 線源としてのラジオアイソトープ(RI)で,通常の使い方では漏えいや散逸が起こらない形に密封されたものを密封線源と呼ぶ。他方,トレーサー実験などの目的で散逸の可能性のある使われ方をする線源を非密封線源と呼ぶ。密封線源は,治療用,工業用ラジオグラフィー,γ線照射など用途によって数百mCiから数百万Ciのものまである。小さな線源の場合には金属板やプラスチックなど簡単な遮へいで十分であるが,大容量の線源を扱う場合には重コンクリートや鉛扉で遮へいされ,遠隔操作で線源の出し入れができる照射室が利用される。RI線源としては,γ線用として,60Co,137Cs,192Irなど,β線用として90Sr,147Pm,90Y,α線用として238Pu,210Poなどがよく使われる。また特殊な例として252Cfを中性子線源として利用することが考えられているが,大量に製造することが現在のところ困難である。

 線源としての加速器も用途により種々のものがある。照射利用工業プロセスの目的では,エネルギーは200keV~3MeV程度であまり大きくないが,電流値が10~200mAときわめて大きい電子線加速器が利用される(加速器)。高エネルギー物理の研究には電子や陽子GeV(109eV)からTeV(1012eV)ときわめて高いエネルギーに加速することができるシンクロトロン線形加速器などの高エネルギー加速器が利用される。シンクロトロンで加速されたり,線形加速器からストレージリングに入射して貯蔵したGeV程度のエネルギーをもつ電子が行う円運動に伴って放出される電磁波放射線をシンクロトロン放射光SOR)と呼ぶ。SORは赤外から硬X線領域にまたがるきわめて強力で安定な放射線であり,線源として種々の応用が考えられている。

 原子炉は強力な中性子線源として他に得がたい特徴をもっているが,一般的にはγ線なども混ざった混合放射線を与えるため,照射効果の解析が困難であることが多い。

 以上のほか,医療や工業用ラジオグラフィーの分野で広く使われているX線発生装置も重要な放射線源に数えることができる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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