(読み)ぶする

精選版 日本国語大辞典 「撫」の意味・読み・例文・類語

ぶ‐・する【撫】

〘他サ変〙 ぶ・す 〘他サ変〙
① なでる。手のひらでさする。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※雑俳・松の雨(1750か)「細い手を撫して時まつ鞍馬山」
② いたわる。慰める。安んずる。
太平記(14C後)一「政武家より出で、徳窮民を撫(フ)するに足(たれ)り」
③ かわいがる。愛する。
随筆胆大小心録(1808)一五六「百臣を撫し、骨肉をしたしみて」
手本を見て書き写す。そっくりそのまま、しきうつしにする。
※随筆・山中人饒舌(1813)上「大阪府人春嶽、専心撫古、捜訪収蔵家秘冊真本、閉戸榻写」

な・ぜる【撫】

〘他ザ下一〙 =なでる(撫)
浄瑠璃大塔宮曦鎧(1723)着到馬ぞろへ「野飼ひの荒駒も君が手綱は逢ふ夜の床よ、撫ぜ撫ぜ、引寄せて、ゆらりと乗って出でたるは」
※水(1972)〈古井由吉〉「火照った肌を風がなぜて通る」
[語誌]ダ行下二段活用の動詞ナヅから変化成立したもの。室町時代の中期以降、ナヅの未然形ナデ+助動詞ウのナデウが長音化し、さらに子音が破擦音化し、ナヂョウとなる。その一方でジ・ヂ・ズ・ヅの混同とともにザ行とダ行の拗音節においても混同が見られるようになる。たとえば、「わごりょがかほなぜうほどに」〔虎明本狂言・不聞座頭〕のように「なでう」が「なぜう」と書かれる例が見られるに至り、ナズ(ナゼル)が成立したとされる。しかし、完全に交替することはなく、両形が併存し、現在にいたっている。

なだ・す【撫】

〘他サ四〙 (動詞「なず(撫)」に上代尊敬の助動詞「す」が付いて音の変化したもの) おなでになる。
書紀(720)雄略即位前・歌謡「臣の子は 栲(たえ)の袴を 七重をし 庭に立して 足結(あよい)那陀須(ナダス)も」

な・ず なづ【撫】

〘他ダ下二〙 ⇒なでる(撫)

ぶ‐・す【撫】

〘他サ変〙 ⇒ぶする(撫)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「撫」の意味・読み・例文・類語

ぶ【撫】[漢字項目]

人名用漢字] [音]ブ(慣) [訓]なでる
なでてかわいがる。「撫育愛撫慰撫
なだめる。てなずける。「巡撫宣撫鎮撫
難読撫子なでしこ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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