(読み)ソン

デジタル大辞泉 「損」の意味・読み・例文・類語

そん【損】

[名・形動]
利益を失うこと。また、そのさま。不利益。「を出す」「な取引」⇔
努力をしても報われないこと。また、そのさま。「正直者をする」「性分」⇔
そこなうこと。こわすこと。
「一命を―にすべきなり」〈曽我・一〉
[類語](1不利益損失損害損亡そんもう欠損実損差損赤字出血持ち出し採算割れ実害被害損する割を食う本が切れる穴をあける割が悪い間尺に合わない食い込む足が出るロス大穴丸損マイナス/(2不利不利益不為ふため不得策不都合劣勢守勢劣る分が悪い

そん【損】[漢字項目]

[音]ソン(呉)(漢) [訓]そこなう そこねる
学習漢字]5年
減らしたり傷つけたりする。そこなう。「損壊損傷損耗損料汚損毀損きそん減損破損磨損
利益を減らすこと。不利益。「損失損得欠損
[名のり]ちか

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「損」の意味・読み・例文・類語

そん‐・ずる【損】

[1] 〘自サ変〙 そん・ず 〘自サ変〙
① こわれる。いたむ。そこなわれる。
※観智院本三宝絵(984)上「此の時に帝尺座忽に損じ」
源平盛衰記(14C前)一八「天下旱魃あり〈略〉畿内遠国忽ち損(ソン)じ、人民百姓歎き悲けるに」
② 少なくなる。へる。
史記抄(1477)六「史漢の文字の増損が不一ぞ。増たがわるいでもなく、損したがよいでもないぞ」
③ なくなる。うせる。
④ 悪くなる。病気になる。
風姿花伝(1400‐02頃)一「又、声も、年寄りてそんずる相なり」
[2] 〘他サ変〙 そん・ず 〘他サ変〙
① そこなう。こわす。いためる。害する。
※中右記‐元永二年(1119)八月一二日「顕仲頗凶悪者也、以一言損人、豈以可然哉」
※義経記(室町中か)六「眼病に身をそんじて、出仕仕らず」
② 少なくする。へらす。
※史記抄(1477)八「郎中なんどの中でめしつかわるる様な者はさのみ多くなくともとて数を損するぞ」
③ 失う。なくす。
古本説話集(1130頃か)四七「さらば多くの物どもそんじて、けふの供養にしあはすべきにあらず」
④ 悪くする。悪く変える。そこなう。
名語記(1275)三「人の心地損じて、物つくをはずといへり」
※随筆・独寝(1724頃)下「すみの色をそんずる也」
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉四「菊池家の家名を損ずる様の事なき様呉々も心つけられ度く」
⑤ (動詞の連用形に付いて) しくじる。まちがえる。
平家(13C前)一一「車やりそんじてきられにける次郎丸おとと、三郎丸なり」

そこ・ねる【損】

[1] 〘自ナ下一〙 そこ・ぬ 〘自ナ下二〙
① ある物が、こわれる。傷つく。破れる。そこなわれる。
※玉塵抄(1563)三「ここに毅が所に位工卿とあり工は上の字がそこねたぞ」
浮世草子世間胸算用(1692)三「こけら(ぶき)の屋ねもそこねぬうちにさし枋(ぐれ)したり」
② ある状態が、悪くなる。悪化する。損じる。そこなう。
※玉塵抄(1563)九「のちに合戦のそこねてくづれてにぐるに江にとび入たぞ」
※虎寛本狂言・子盗人(室町末‐近世初)「余り声高にいふたに依て、機嫌がそこねた」
[2] 〘他ナ下一〙 そこ・ぬ 〘他ナ下二〙
※歌舞伎・三千世界商往来(1772)三つ目「高が三十枚か五十枚の事で人を損ねる事ぢゃと、如何にも見遁したが」
② (「ぞこねる」とも) =そこなう(損)(二)
※或る女(1919)〈有島武郎〉前「質問の要領をはっきり捕へそこねて、更に赤くなって術ない身振りをした」

そん【損】

〘名〙
① そこなうこと。傷つけること。こわすこと。失うこと。損傷。破損。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
② (形動) 利を失うこと。益のなくなること。また、そのさま。不利益。不得策。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「物の費えある事を数ふれば、多くのそむなり」
③ 易の六十四卦の一つ、。上卦は艮(ごん)(=山)、下卦は兌(だ)(=沢)。山沢損ともいう。下を減少し上に増加する象(しょう)。この卦は泰封の三爻(こう)目の一陽が上爻に行き、そこに六爻目の陰が下ったさまであることから、下を損して上を益する象とする。

そん・じる【損】

(サ変動詞「そんずる(損)」が上一段活用に転じた語)
[1] 〘自ザ上一〙
文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉二「一品喰尽した所で、又一品を出す故、味ひの損(ソン)じる事もなく」
② 腹を立てる。怒る。〔当世花詞粋仙人(1832)〕
[2] 〘他ザ上一〙 =そんずる(損)(二)
※和英語林集成(初版)(1867)「ミ sonjiru(ソンジル)
※多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「『急にも晩(おそ)くも僕はもう一生妻は有(も)たんと言ふのに』と柳之助は忽ち機嫌を損じる」

そこない そこなひ【損】

〘名〙 (動詞「そこなう(損)」の連用形の名詞化)
① そこなうこと。こわれたり、悪くなったりすること。
※志都の岩屋講本(1811)上「終には皇国の損害(ソコナヒ)とも相成べき大事に至っては」
② (「ぞこない」とも。動詞の連用形に付けて) しそこなうことの意を表わす。
※日蓮遺文‐題目彌陀名号勝劣事(1264)「日蓮幼少の時、習そこなひの天台真言宗に教へられて」

そく‐な・う ‥なふ【損】

〘他ワ五(ハ四)〙 (「そこなう」の変化した語。多くは動詞の連用形に付けて用いる) =そこなう(損)
※洒落本・まわし枕(1789)「染(そめ)そくなった唐くさアみるよふな」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「跡の替り目も見損(ソク)なったよ」

そん‐・する【損】

〘他サ変〙 そん・す 〘他サ変〙 利益を失う。損をする。また、そこなう。害する。
※浮世草子・好色万金丹(1694)三「約束のない女郎も、身揚り一ツ損(ソン)する分と」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉四「下手なものを遣れば智識の威厳を損する訳になる許りだ」

ぞん【損】

〘語素〙 行動・動作を表わす動詞またはそれに準ずる活用語の連用形に付いて、その行動をしても、結果として不利益にしかならなかったことを表わす。「骨折り損」など。
※浮世草子・世間胸算用(1692)三「皆喰(くは)れ損(ゾン)になるはしれた事」

そん‐じ【損】

〘名〙 (動詞「そんずる(損)」の連用形の名詞化) こわれいたむこと。いたみそこなうこと。また、その部分。いたみ。
※怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉一三「夜にでも宅(うち)へ参て釣道具の損じを直して呉れ」

そ‐・ず【損】

〘他サ変〙 (動詞「そんず(損)」の撥音「ん」の無表記) =そんずる(損)
※宇津保(970‐999頃)国譲下「この宮『すくわいつからまゐりそしたりや』とて、御かはらけ参り給ふ」

そこ・ぬ【損】

〘自他ナ下二〙 ⇒そこねる(損)

そん‐・ず【損】

〘自他サ変〙 ⇒そんずる(損)

そん‐・す【損】

〘他サ変〙 ⇒そんする(損)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android