損害賠償命令制度(読み)ソンガイバイショウメイレイセイド

デジタル大辞泉 「損害賠償命令制度」の意味・読み・例文・類語

そんがいばいしょうめいれい‐せいど〔ソンガイバイシヤウメイレイ‐〕【損害賠償命令制度】

殺人傷害過失犯は除く)など一定刑事事件において、刑事裁判の判決後、引き続き同じ裁判所損害賠償請求の審理を行う制度犯罪被害者保護制度の一つで、平成20年(2008)12月から導入された。従来は刑事裁判とは別に民事裁判で審理していた損害賠償請求手続きなどの負担減・効率化を目的とする。犯罪被害者とその家族・遺族から被告人に対して損害賠償請求の申し立てがあった場合、被告人に有罪判決が言い渡された後、同じ裁判所で刑事記録を取り調べるなどして、原則4回以内の審理で決定が下される。この決定に異議申し立てがある場合や、長期化する場合は民事裁判に移行する。

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知恵蔵 「損害賠償命令制度」の解説

損害賠償命令制度

刑事事件となった犯罪の被害者本人やその遺族などの一般継承人が、刑事事件の裁判に追随する私訴として、加害者に対する民事的な損害賠償命令を申し立てできるという制度。刑事事件を担当した裁判所が、引き続き損害賠償請求の審理を行って損害の賠償を加害者に命じることができるという、犯罪被害者保護制度の一環として定められている。
従来は、犯罪事実に関する刑事事件とその被害についての損害賠償の民事裁判は、それぞれ独立した別の裁判として扱われていた。このため、被害者側の費用や心理的な負担が大きく、証拠の準備などにも困難な状況があった。これを打開するため、2008年に施行された「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」によって、この制度が定められた。刑事裁判に付帯する私訴という概念は、ドイツやフランスなどの刑事法で見られる。日本でも旧刑事訴訟法には同様の規定があったが、戦後の刑事訴訟法では廃止されていた。
制度は、殺人・強姦(ごうかん)・誘拐監禁などの犯罪行為や未遂についての故意犯に適用される。申し立ては起訴後第1審、地裁の言論手続きの終了までで、手数料は2000円。有罪判決の後、同じ裁判所が刑事裁判記録に基づいて審理を行う。審理は原則として4回までとされ、審理結果の決定は民事裁判の確定判決と同一の効力を持つ。通常の民事裁判を別途行うよりも、簡易で迅速な解決が図れると期待されている。ただし、無罪判決となれば、申し立ては却下され、必要であれば通常の民事裁判を提起する必要がある。また、控訴審以降は対象とはならず、家庭裁判所における少年審判事件などでもこの制度は利用できない。

(金谷俊秀 ライター/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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