握りずし
にぎりずし
すし飯に種(たね)をのせて軽く握ったもの。いま、すしといえば握りずしと解されているが、握りずしのおこりは江戸の後期、文政(ぶんせい)(1818~1830)初年で、華屋与兵衛(よへえ)が創作したものといわれている。最初はエビのおぼろを用いたと伝えられているが、種は3種に分類できる。多く用いられたのが煮物で、イカ、エビ、アナゴ、ハマグリなどが材料であった。次は、光り物の名で知られるコハダ、アジなど酢に漬けたもの。三番目が刺身に用いる魚貝類である。現在のすし種は、マグロ、ヒラメ、タイ、スズキ、シマアジ、カンパチなどのほかに、エビ、イカ、イクラ、ウニ、数の子、アワビ、アカガイ、トリガイなど生(なま)ものが多くなった。これに反して煮物は著しく少なくなった。
このほかに、キュウリ、カイワレナ、沢庵(たくあん)など植物性の種もあるが、これらは海苔(のり)で巻いて用いるほうが多い。握り方のこつは、箸(はし)で挟んで崩れず、口に入れて散るのを標準とする。
[多田鉄之助]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内の握りずしの言及
【江戸前】より
…江戸の目の前の場所の意で,ふつう東京湾内奥のその海でとれた新鮮な魚類をいい,転じて,生きのよい江戸風の事物をいうようになった。現在では握りずしの種の鮮度を誇示する語として,もっぱらすし屋がこれを用いている。しかし,《物類称呼》(1775)には〈江戸にては,浅草川,深川辺の産を江戸前とよびて賞す,他所より出すを旅うなぎと云〉とあり,《江戸買物独案内》(1824)を見ると,江戸前,江戸名物などととなえているのはすべてウナギ屋で,すし屋はほとんどが御膳と称している。…
【酢】より
…漬物用としては奈良時代にトウガンやアオナ(カブナ)の酢漬,ナスの酢かす漬の名を見ることができる。近世以後の新しい利用法としては,米飯に酢を加えて酢飯とする調理法の開発が重要で,これによって押しずし,握りずしといった美味な米飯料理が誕生した。 酢は,調味に使う場合はほとんど二杯酢,三杯酢,カラシ酢,ゴマ酢その他の合せ酢として用いられる。…
【すし(鮓∥鮨)】より
…前者はすしの原形とされるもので馴(な)れずし(熟(な)れずし)と呼び,現在の日本で代表的なのは〈近江(おうみ)のフナずし〉であろうが,東南アジアから中国の一部にかけてかなり広く行われているものである。後者は握りずしに代表されるもので,日本独特の米飯料理である。すしは,鮓,鮨,寿司,寿志,寿しなどと書かれるが,鮓と鮨のほかはすべて江戸中期以後に使われるようになった当て字であり,また,〈すもじ〉〈おすもじ〉というのは室町時代から使われた女房ことばである。…
※「握りずし」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」