揚幕(読み)アゲマク

デジタル大辞泉 「揚幕」の意味・読み・例文・類語

あげ‐まく【揚(げ)幕】

能舞台で、鏡の間橋懸かりとの境に掛ける幕。
歌舞伎で、花道、時には上手かみて下手しもて出入り口に掛ける幕。紺地劇場の紋を白抜きにする。
[類語]緞帳黒幕引き幕定式幕

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精選版 日本国語大辞典 「揚幕」の意味・読み・例文・類語

あげ‐まく【揚幕】

〘名〙
① 能舞台の鏡の間と橋懸(はしがかり)との境に掛ける幕。五色垂れ幕で、役者の登場、退場には、裾の両端につけた竹竿で斜め後ろに引き上げる。
浄瑠璃・傾城酒呑童子(1718)四「只今あげ幕入(いり)さまに面の内からちらりと見た」
② 歌舞伎で、花道また上手、下手出入り口に掛ける幕。紺地に劇場の紋を白抜きで染めた幕で、左右に開閉する。
役者論語(1776)続耳塵集「むかしの役者は揚(アゲ)まくより出端(では)を大事にせし事也」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「揚幕」の意味・わかりやすい解説

揚幕
あげまく

能、歌舞伎(かぶき)の舞台用語。能舞台では橋懸(はしがか)りと鏡の間の境目に下げた幕のことで「御幕(おまく)」ともいう。唐草緞子(からくさどんす)の白、青、赤、黄、黒の5色を縦に並べた幕で、演者の出入りには、後見(こうけん)2人が、幕の裾(すそ)の両端につけた2本の竿(さお)で鏡の間のほうへ跳ね上げる。歌舞伎の揚幕はその変形で、花道の突き当たり、ときに舞台の下手(しもて)、上手(かみて)にもある幕。紺地に劇場または興行会社の紋を白抜きに染め、左右に開閉する。

[松井俊諭]

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世界大百科事典(旧版)内の揚幕の言及

【能舞台】より

…舞台への出入りは橋掛りの突当りの幕口を主とし,ほかにアト座右奥に切戸口(きりどぐち)(臆病口とも)がある。幕口には揚幕(多くは五色の緞子(どんす)などをはぎ合わせて作る)を下げ,その両袖に結び付けた2本の竹で上げ下げする。立方(たちかた)と囃子方はこの幕口を通って舞台に出入りするが,橋掛りは登・退場の通路であると同時に,本舞台と同様の舞台空間,演技の場所でもある。…

※「揚幕」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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