掻撫(読み)かいなで

精選版 日本国語大辞典 「掻撫」の意味・読み・例文・類語

かい‐なで【掻撫】

〘名〙 (形動) (「かきなで(掻撫)」の変化した語)
物事表面を撫でただけで、その真相を知らないこと。また、そのようなさま。ありきたり。通りいっぺん。
源氏(1001‐14頃)末摘花「かうやうのかいなでにだにあらましかばと、かへすがへすくちをし」
読本・南総里見八犬伝(1814‐42)九「膂力も亦凡庸(よのつね)ならねば泛々(カイナデ)の敵手(あひて)にあらず」
妖怪一種真夜中の厠(かわや)に出て、人の尻を撫でるという。
風俗画報‐一五六号(1898)人事門「小児は夜分圊(かはや)にゆけば『掻(カ)い撫(ナテ)』といへる妖怪(おばけ)尻を撫に出でけんとて太(いた)く怖るる」

かき‐な・でる【掻撫】

〘他ダ下一〙 かきな・づ 〘他ダ下二〙
① 手、または、それに似た形のもので柔らかく、または、やさしくさする。愛撫(あいぶ)する動作にいうことが多い。かいなず。
万葉(8C後)二〇・四三四六「父母が頭(かしら)加伎奈弖(カキナデ)(さ)くあれていひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる」
※源氏(1001‐14頃)夕霧「御ここちの苦しきにも御くしかきなでつくろひおろしたてまつり給ひしをおぼしいづるに」
弦楽器を鳴らす。〔改正増補和英語林集成(1886)〕

かい‐な・ず ‥なづ【掻撫】

〘他ダ下二〙 (「かい」は接頭語) なでる。
書紀(720)神代上(乾元本訓)「中間(なか)に一りの少女(をとめ)を置(すえ)て掻撫(カイナテつつ)(〔江〕同之)哭く」
※源氏(1001‐14頃)若紫「かいなでつつかへりみがちにて出で給ひぬ」

かき‐なで【掻撫】

〘名〙
① 手、または、それに似た形のものでなでること。
② (形動) 物の表面をなでるばかりで、その中の事を知らないこと。表面ばかりを知って、その深いところを知らないさま。通りいっぺんなさま。かいなで。
※源氏(1001‐14頃)明石「すべてただ今世に名を取れる人人、かきなでの心やりばかりにのみあるを」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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