排水(建築)(読み)はいすい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「排水(建築)」の意味・わかりやすい解説

排水(建築)
はいすい

一般的には水を排出することであるが、建築の分野では、排水する水は、雨水、台所などからの雑排水水洗便所からの汚水に分類される。これらが、配水管悪臭を防ぐトラップ、排水枡(ます)などを通じて敷地外に導かれ、さらに下水道に排出される。下水道は、雨水と汚水が同じ下水道に流れ込む合流式と、別々の排水系統によって排除される分流式がある。流れの下流勾配(こうばい)が十分にとれないときには、排水ポンプが用いられる。

 工場からの特殊排水(工業排水)、農地排水も重要である。とくに低平な農地では作物の水分環境のために、また特殊な競技場などでも、暗渠(あんきょ)による地中の水の排水が行われる。

 排水施設の流量の設計にあたっては、汚水の場合では、1回35リットルなど基準の量を参考にする。雨水は、10分間で30ミリ、1時間では100ミリ程度を排水できるように考えるが、大掛りな土木工事では、さらに精密に、たとえば5年に1回とか、10年に1回の割合でおこるような大きさの降雨を統計的に求め、設計を行う。排水管内の流速は、遅いと土砂がたまり、速すぎると水勢によって管が傷みやすい。建築、下水道では、一般的に0.6~3メートル/秒の範囲になるよう、種々の水理公式を用い、上下流の圧力差を勘案しつつ計算をする。

[中村良太]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android