すて‐いし【捨石】
〘名〙
① 道ばたや、野や山にころがっている、誰も顧みない
岩石。また、
平生直接の用には立たないが、おかれている石。
※俳諧・七柏集(1781)雲中庵興行「市の七日に手帋七度〈柳苔〉 馬繋ぐ捨石ひとつ軒の下〈
蓼太〉」
② 築庭で、風致を添えるために程よい場所にすえておく石。
※俳諧・宗因七百韵(1677)「扨こそ清水の流れ各別〈禾刀〉 落滝津山石捨石物数奇に〈如見〉」
③
堤防、
橋脚などの工事で、
水底に基礎を造り、堤防の崩壊を防ぎ、また
水勢をそぐために水中に投入する石。
※俳諧・談林十百韻(1675)下「川浪たたく出しの捨石〈一朝〉 人柱妙の一字にとどまりて〈志計〉」
④ 歌舞伎の
大道具の一つ。
戸外の場の舞台に置いておく石の作り物。
※歌舞伎・
小袖曾我薊色縫(十六夜清心)(1859)五立「武太夫捨石へ腰をかけ」
⑤ 囲碁で、より以上の効果を得るために、わざと相手に取らせる石。シボリ、シメツケ、目欠きの筋などでよく用いられる。
※家(1910‐11)〈
島崎藤村〉下「碁で言へば、まあ捨石だ。俺が
身内を助けるのは、捨石を打ってるんだ」
⑥ 今すぐには効果はなく、むだなように見えるが、将来役に立つことを予想してする投資や予備的行為など。
※
浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)一「大身も事に臨で命を捨石
(ステイシ)」
※
故旧忘れ得べき(1935‐36)〈
高見順〉一〇「残した
足跡は小さかったにしても、彼も
地固めのための捨石になったとは言ひ得るだらう」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「捨石」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
捨石
すていし
refuse; waste; debris; tailings
鉱山,炭鉱などにおいて坑道掘進,採鉱 (採炭) ,選鉱 (選炭) などの過程で選別されて出てくる不要の岩塊,岩片,スライム (岩石などの微細粒子) などの総称。廃石,廃滓 (特に微細なもの) ともいい,鉱山では主として「ずり」,炭鉱では「ぼた」または「ずり」と呼ばれている。捨石は露天採掘跡,谷間,平地などに堆積して廃棄されるほか,充填採鉱法を採用している鉱山では充填材として用いられる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の捨石の言及
【庭園】より
… 17世紀も中期になると町人の文化が栄え,華やかな風潮が支配する時期を迎えたが,庭園も広い芝生をとった明るいものになった。中世のように池泉にも石組みを多く使わず,石を使うときも,捨石といって要所に1個だけを捨てたかのように配することが行われた。まるみのある石が好んで使われたのはこのころである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」