挽物(読み)ひきもの

精選版 日本国語大辞典 「挽物」の意味・読み・例文・類語

ひき‐もの【挽物】

〘名〙 轆轤鉋(ろくろがんな)で木などを挽いて作った器具細工物挽物細工
御湯殿上日記‐明応四年(1495)一〇月五日「あんせん寺とのゆのやまより御下かうとて、ひきものの御しきろう、かきのふたまいる」

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改訂新版 世界大百科事典 「挽物」の意味・わかりやすい解説

挽物 (ひきもの)

木材ろくろ轆轤)や旋盤でひき,椀,鉢,盆など円形器物をつくる技術およびその製品をいう。法隆寺の百万小塔は古代の挽物として著名である。ろくろは古くから使われたが,今日滋賀県君ヶ畑などの木地屋集落に遺されている手びき・足びきのそれは,原型に近いものであろう。弥生時代の奈良県唐古遺跡出土の高杯や鉢などの木器には,すでにその使用が認められている。挽物は木工のうちでもっとも量産の可能な技法だけに,木工の盛んな地方では品種による専門別のほかに木取り,荒びき,仕上げびきなど各工程ごとに分業化されている。また金工においても,仕上げの際,ろくろをかけて鋳肌などを平滑にしたものを挽物という。
轆轤(ろくろ)
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「挽物」の意味・わかりやすい解説

挽物
ひきもの

ろくろ(轆轤)仕上げを行う木工品の総称。まず木取りをし、手斧(ちょうな)で内を彫り、最後に横軸のろくろにつけて削り、棒鉋(ぼうがんな)で仕上げて、塗師(ぬし)屋に送る。製品としては、御器(ごき)(神饌(しんせん)具の一種)、椀(わん)、木鉢(きばち)、木皿(きざら)、丸盆、丸膳(まるぜん)、茶櫃(ちゃびつ)などがある。このほか、こけし、こまなどのような玩具(がんぐ)をつくる職人もいる。これらは、ほとんど木地(きじ)屋(挽物師)の独占的な仕事であって、瀬戸物などの普及しない江戸時代以前には、この種の食器が一般に多く用いられていた。

[宮本瑞夫]

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「挽物」の解説

挽物[木工]
ひきもの

関東地方、栃木県の地域ブランド。
宇都宮の挽物は、欅などを材料とし、ろくろを使ってつくる木工品。材料となる木材をじっくり乾燥させてから荒挽きし、漆を塗る。生漆塗をほどこした椀や盆は、木目が際立ち、漆の色の変化も楽しめる。栃木県伝統工芸品。

挽物[木工]
ひきもの

九州・沖縄地方、熊本県の地域ブランド。
熊本市で製作されている。桑・欅・桜などを材料として使用。硯箱・八角茶筒などが手づくりされている。熊本県伝統工芸品。

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世界大百科事典(旧版)内の挽物の言及

【木地屋】より

…木地は,(1)木の地質(木目),(2)細工物の粗形,(3)とくに指物・漆器などに漆その他の塗料を加飾しないものをいうが,このうち(3)を製作することを生業とした職人が,近世以来ひろく〈木地屋〉と呼ばれていた。それも大別すると,(a)指物などの板物細工に従った角物木地,(b)円形木器の挽物(ひきもの)細工に従った丸物木地,(c)杓子・檜物(曲物)など雑多な木地細工に従うものがあった。その中で(b)の丸物木地は,工具に原始的な手びきろくろとろくろがんなを操作して,いわゆる挽物の日用食具(椀,盆,丸膳など)を主に生産して庶民生活にとりわけなじみ深いものであったからか,木地屋といえばもっぱらこの種職人の代名詞のようになっている。…

【木工芸】より

…19世紀中期以後は主役をなす木材はなく,家具の使用目的に応じて多種多様な木材が使われるようになった。 木製家具の美的価値を高めるためには,古来からいろいろな装飾技法が採用されてきたが,そのおもな装飾技法は,彫刻,挽物,寄木細工,象嵌,化粧張り,塗装,金箔付けなどである。(1)彫刻carving 〈切込彫chip carving〉〈浅浮彫bas‐relief〉〈高浮彫high‐relief〉〈透し彫〉などがある。…

※「挽物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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