持続化給付金(読み)じぞくかきゅうふきん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「持続化給付金」の意味・わかりやすい解説

持続化給付金
じぞくかきゅうふきん

新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の直撃を受けた中小企業や個人事業者を救済するための給付金。売上げが急減した事業者に給付し、事業継続を下支えする目的があった。2020年(令和2)1月~12月のうち、1か月でも売上高前年比50%以上落ち込んだ事業者が対象。2020年1~3月に創業した事業者については、3月までの平均売上高と比べ4月以降の特定月の売上高が50%以上減った場合が対象となる。売上高の減少分を支給上限とし、中小企業に最大200万円、フリーランスを含む個人事業者に最大100万円を支給した。医療法人、農業法人NPO法人など会社形態以外の法人も対象であるが、風俗関係、政治団体、宗教団体は対象外。専用サイトで申請し、減収を証明する売上台帳や確定申告書類などを提出する必要がある。フリーランスは業務委託契約書や源泉徴収票など売上げが事業によることを示す書類が必要で、実施主体は中小企業庁。2020年5月~2021年1月末(書類提出期限は2021年2月15日)に受け付け、約424万の事業者に約5.5兆円を給付した。不正受給には20%加算返還罰則を科したが、不正受給(詐欺罪など)が相次いで表面化。中小企業庁は捜査前に自主返還すれば罰則を免除する返還促進策をとり、自主返還件数は1万5000件(約166億円)を超えた。経済産業省は悪質な事案詐欺罪で刑事告発し、返還に応じない人や法人の氏名・所在地などを公表している。警察庁によると、2022年5月末時点で、詐欺事件の摘発は約3200件に上り、被害額は32億円を超え、その後も増え続けている。

 なお、新型コロナウイルス感染症流行の長期化に伴い、政府は2021年11月~2022年3月のいずれかの月の売上高が過去3年(2018年11月~2021年3月)の任意の同じ月に比べて30%以上落ち込んだ事業者を対象に、持続化給付金と類似の事業復活支援金制度を設けた。売上高減少分の5倍を支給上限とし、最大で中小事業者に250万円、個人事業主に50万円を支給した。不正を防ぐため、商工会や会計事務所など国の登録機関が事業実態を事前確認する制度を採用した。

 新型コロナウイルス感染症被害対策の補助・給付金には、持続化給付金や事業復活支援金以外に、中小企業向けの家賃支援給付金雇用調整助成金の上乗せ、授業料を減免した大学への助成金、医療・介護従事者への医療従事者慰労金、文化・芸術関係者への各種補助金、全国民向けの特別定額給付金、児童扶養手当の受給世帯に対する特別給付金などがある。

[矢野 武 2022年8月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵mini 「持続化給付金」の解説

持続化給付金

2020年の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、事業継続が困難になるなど深刻な打撃を受けた中小企業、個人事業者に対する、国による大規模な現金給付策のこと。同年4月7日に支給が決定した。資本金10億円未満の企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業主などのほか、医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人など会社以外の法人が、前年同月比で売上が50%以上減少している場合に支給の対象となる。給付額は法人で最大200万円、個人事業主で100万円。ただし、前年1年間の売上からの減少分が上限額となる。申請は、前年の確定申告書類の控えや、減収月の事業収入額を示した帳簿などを用意し、インターネット上で行う。

(2020-4-16)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

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