拾芥抄(読み)しゅうがいしょう

精選版 日本国語大辞典 「拾芥抄」の意味・読み・例文・類語

しゅうがいしょう シフガイセウ【拾芥抄】

中世百科事典。三巻。著者洞院公賢(とういんきんかた)とされるが、原本は鎌倉中期に成立し、その後くりかえし追記されたもの。宮中天文地理文学風俗諸芸宗教禁忌などの部立に従って、漢文で簡略に記述。多くの和漢書を引用する。「増訂故実叢書」に所収。拾芥略要抄。略要抄。

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デジタル大辞泉 「拾芥抄」の意味・読み・例文・類語

しゅうがいしょう〔シフガイセウ〕【拾芥抄】

南北朝時代の百科便覧。3巻。洞院公賢とういんきんかた撰、玄孫実熙さねひろ増補。歳時・文学・風俗・諸芸・官位典礼など99部に分け、漢文で簡略に記述。拾芥略要抄。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「拾芥抄」の意味・わかりやすい解説

拾芥抄
しゅうがいしょう

室町時代有職(ゆうそく)中心の類書で、一種の百科事典。3巻。一名『拾芥略要抄』また『略要抄』ともいう。編者は洞院公賢(とういんきんかた)で、その5世の孫実煕(さねひろ)補とされる。公賢は後醍醐(ごだいご)、村山、後光厳(ごこうごん)の3代に仕え、従(じゅ)一位、左・右大臣を歴任し、『園太暦(えんたいりゃく)』『皇代暦(こうたいりゃく)』の著がある。実煕も従一位、左大臣に至り東山左府と称せられ、『名目抄(みょうもくしょう)』の著がある。

 内容は99部に分かれ、天文、地理、歳時から虫魚草木などで、とくに中巻は有職にあてられる。漢文であるが明快で、歴代の記録を集成し、簡略化して、記憶利用の便を図ったため、室町時代公卿(くぎょう)の間に愛用されたことは、『実隆公記(さねたかこうき)』(三条西)や『言継卿記(ときつぐきょうき)』(山科)などの記録で証明される。1613年(慶長18)活字版にして、初めて行基作日本図と京都左右両京図を載せている。1640年(寛永17)整版にして以来、広く通用されるようになった。1954年(昭和29)「故実叢書」22(吉川弘文館)に校訂発行された。

[彌吉光長]

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改訂新版 世界大百科事典 「拾芥抄」の意味・わかりやすい解説

拾芥抄 (しゅうがいしょう)

一種の百科事典。3巻。編者は洞院公賢あるいは洞院実煕というが,原型は鎌倉中期に成りその後増補が加えられていったものと考えられる。《拾芥略要抄》《略要抄》ともいう。歳時,経史,和歌,風俗,百官,年中行事など99部を載せ,宮城指図,八省指図,東西京図等の付図がある。中世における公家の一般的教養や諸制度,習俗などがよくわかる。《新訂増補故実叢書》所収。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「拾芥抄」の意味・わかりやすい解説

拾芥抄
しゅうがいしょう

正称は『拾芥略要抄』。中世の百科事典ないしは生活便覧ともいえる書物の一つ。初めは3巻であったらしいが,増補されて6巻となっている。編者は洞院公賢 (とういんきんかた) とする説と洞院実煕 (さねひろ。 1409~57) とする説があるが,公賢原編,実煕増補とみる説が有力。ただし実煕以後の記事も含まれているから,順次増補されてきたものと思われる。内容は 99部門で,生活百般,文芸,政治関係その他,およそ貴族として生活していくために必要な最低限の知識,教養を簡単に解説したもの。室町時代に最も重宝がられたが,江戸時代にも流布している。『故実叢書』所収。

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百科事典マイペディア 「拾芥抄」の意味・わかりやすい解説

拾芥抄【しゅうがいしょう】

正称は〈拾芥略要抄〉。一種の百科事典。3巻。編者は洞院実煕(さねひろ),あるいは洞院公賢(きんかた)とも。鎌倉中期に原型ができ,その後増補されていったもので,歳時・経史・風俗・年中行事などが記され,中世における公家の信仰・習俗・教養,諸制度などを知る基本的史料。
→関連項目

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「拾芥抄」の解説

拾芥抄
しゅうがいしょう

正しくは「拾芥略要抄」。歳時・文学・官位・国郡・名所など99部門に分類した百科全書。3巻。編者は洞院実熙(さねひろ)とも洞院公賢(きんかた)ともいう。原形は鎌倉中~末期に成立。貴族の教養書として珍重され,多くの増補・書継ぎがある。ほかに有職書として「口遊(くちずさみ)」「二中歴(にちゅうれき)」が有名だが,「延喜式」以後の公家制度や信仰・習俗などを知る基本史料。「故実叢書」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「拾芥抄」の解説

拾芥抄
しゅうがいしょう

鎌倉中期に成立した有職 (ゆうそく) 書
『拾芥略要抄』の略。3巻。著者不詳。歳時・文学・風俗・官位・神祇など99部門に分けた一種の百科事典。平安時代の有職を知るのに便利。

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世界大百科事典(旧版)内の拾芥抄の言及

【食合せ】より

…とにかく,食経の示す食合せを避けることは法の志向するところであり,それは天子の食事だけでなく当然国民一般の食生活にも浸透していった。南北朝時代に洞院公賢(とういんきんかた)が著したとされる《拾芥抄(しゆうがいしよう)》には,ゴマ,ダイズ以下62種の動植物性食品について食合せになるものの名を挙げているが,その中には最近まで最も危険な食合せとされていたものの名が見られない。すなわち,ウナギと梅干し,てんぷらとスイカ,そばとタニシといったところであるが,ウナギの蒲焼,そば切り,てんぷらのいずれもが江戸時代に入ってからのものであることを思えば当然である。…

【百科事典】より

…室町時代の末には,《塵袋》と《壒囊鈔》を併せて一つにまとめた《塵添(じんてん)壒囊抄》20巻が作られ,近世を通じて広く用いられた。 公家の文化は,中世を通じて対象化され,憧憬の対象となったが,鎌倉時代の末に作られた《拾芥抄(しゆうがいしよう)》3巻は,平安時代以来の有職故実(ゆうそくこじつ)についての知識を集成した事典として重要な意味をもっている。また,中世の代表的な辞典である《下学集(かがくしゆう)》や《節用集(せつようしゆう)》は,類書的な編成をもっていたから,広く百科事典的な役割も果たした。…

※「拾芥抄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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